さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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4月鹿の与太話。



エイプリルフールの戯言

キミは、どこにでもいるウマ娘だ。

やさしい家族に囲まれて、愛されて育ったありふれた幸せなウマ娘だ。

また仲の良い友人たちと過ごし、挫折というものを知らないままトレセン学園へと入学したウマ娘だ。

そんなキミはトレセン学園に入っても挫折というものを知らなかった。

その肉体はとても強靭であり、それに見合う切れ者の頭脳を持っていて、どんな勝負にも勝ってきたのだ。

けれどそれは──まやかしだった。

 

ある日、ある模擬レースに出走した時、キミは負けてしまった。

圧倒的な性能差をもって勝利してきたのに…完膚無きまでに負けたのだ。

キミはどんな距離だって、どんな戦法だってそつなく熟せるし、それになにより走ることが大好きだった。

しかしそれでも、そのレースでキミに勝ったのはキミの2倍も3倍も体の小さなウマ娘だった。

その時、キミは初めて知る。

これが、本物の才能なのだと。

どれだけ努力しても届かない存在があるのだと───。

 

 

その日からキミは、自分を負かしたかのウマ娘に日々勝負を仕掛けるようになった。

毎日、毎日、キミは彼女に勝つために朝から晩まで練習に明け暮れた。

寝る間も惜しんで走り込みを続けた。

食事の時間すら忘れるほどトレーニングに没頭した。

 

でも……届かなかった。

いくら練習して走力を高めても、体力をつけてスピードをつけようとも、彼女の背中にはまったく追いつかない。

逆に「無理をするのはやめた方がいい」と諌められる始末。

 

だがしかし彼女は強かった。

誰も彼女には勝てないほどに。

誰もが彼女に敗北していった。

それでもキミは諦めない。

諦められなかった。

だって、そうだろう?

キミはあの日、生まれて初めての敗北を知った。

だから……だからこそ、この感情だけは本物なんだ。

絶対に、絶対にそうだと、心が、()が、叫ぶのだ。

 

彼女を追うたびに肺が潰れそうになる。

彼女を追うたびに脚が壊れかける。

それでも追わずにはいられない。

それほどまでに……彼女の走りは美しかった。

そして、いつか必ず勝ってみせるという熱い想いが湧き上がってくる。

 

───ああ、そうだ。これこそがきっと……。

 

誰かを追い求める気持ち、誰かのために、()()()()自分のために頑張れる気持ち。

これが、これこそが…!

 

「楽しいって、ことなんだね…!」

 

キミは笑う。嗤う。

それまでに築き上げた良きこと(すべて)をぶち壊して。

ただ、自分を見つめる彼女だけを見やって。

そうすれば、

 

「…キミって、案外面白いヤツなんだな───"メアリイ・スー"」

 

彼女も、"シルバーバレット"もキミと同じような笑みを見せ…?

 

【もしも、"理想"と"無敵"が出会ったら?】





───さァ、どっちが勝つ?
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