さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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子の情緒ぐちゃぐちゃにするのが銀系列なんで…。



『楽園』とは?

俺たちが行き着くべき-『楽園』は、いったいどのような場所だろうか。

ただ光が示す方に、まるで羽虫のように羽ばたいては疑いも知らぬまま潰され焼け落ちていく。

やわらかな夢想だけを緩衝材に、墜落していく。

 

誰もが『楽園』の存在を肯定しては、誰もその場所を知らない。

良い子は天国に行けて、悪い子は何処へでも行けるというのなら。

俺はきっと、地獄に行くんだろうなと、そんなことを思った。

 

 

「……あ」

 

ふっと意識が浮上して、目を開く。

いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

寝ぼけ眼を擦りながら身体を起こすと、ガタガタになった手の爪が嫌に視界に入った。

無自覚の、直らないクセ。

どれほど矯正しようにも治らなかったそれは、もう諦めた方が早いくらいには年季が入っている。

 

「…………」

 

肌を搔けば、チリチリとした微かな痛みを脳に伝えた。

ささくれもひどい、傷だらけの自らの手に俺は。

 

「……まただ」

 

いつも通りのため息をつくのだ。

 

 

自分の跡を継がせる存在がまぁまぁできて。

自分の後悔を言葉少なに語っては引き継がせていた。

自分みたいにはならないでほしい、と願いながらも出来上がったのは自分の素養を持ってしまった幼子たちで。

 

きっと。

どうか『救って』と手を伸ばされても。

"あのウマ"のように誰かの救いになることなんてできなくて。

だから自分は。

その手を取ることすらできないままに。

結局は、自分自身の何もかもですら、見捨ててしまうようなウマだったから。

自分が見捨てられても仕方がないと思うし、そうやって当たり前だと思う。

……だけど、それでも。

 

「そっちじゃないでしょう、父さん」

 

自分ひとりで、背負うべきだった罪、もしくは咎を抱え込まれた。

どれほど離せ、と言い募っても「嫌です」と強く返されるばかりで。

それどころか、こちらの話を聞く気もないのか、ただひたすらに俺の手を引いていくばかり。

本当に、どうしようもなく頑固者なのだ、この自慢の我が子は。

 

「父さんが墜ちるなら、僕も一緒に墜ちます」

 

前を向いた、我が子の顔は見えない。

自分が何を言っているのか、分かってるのか。

そう言いたくても、有無を言わせない圧が背中越しに伝わるだけ。

 

「父さんひとりだけで行かせるものですか」

 

強い口調とは裏腹に、繋いだ掌だけはひどく震えていて。

それに気づいた瞬間、思わず笑みがこぼれてしまった。

ああ、そうだよな。

お前だってまだ子どもなんだもんな。

本当は怖くて堪らないのにこうして…。

 

「…ありがとう、プレアー」

 

 

父の目はいつだって後悔と罪悪感に塗れていた。

『自分のせいだ』と今にも懺悔しそうな口を手で押さえ込んでは蹲っているような、そんな。

 

「父さん」

 

蹲って、震えている体を掻き抱いた。

"あのウマ"が『呪い』の原初だというのなら、父はいったい何なのだろう。

あと一歩、足りなかった『夢』を見せてしまった父は。

けれど。

 

「一緒に、墜ちましょうね」

 

それは、僕も同じか…。





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。SAN値がヤバい。
自分のせいで子どもたちが報われない道に行く…(SAN値ガリガリ)。
あの時自分が門をくぐれていたらこんなことには…オエッ。
自分のせいだ自分のせいだ自分のせいだ(ぐるぐる目)。

【銀の祈り】:
シルバープレアー。【銀色の王者】の子ども。
精神ぐちゃっている父親を支えることに仄暗い悦びを抱いている系ウッマ。
系譜的にはシロガネハイセイコの感じ。
父さんがそれを罪に感じるというのなら、祈りを遂げてしまった僕も同じようなものなので…。
ひとりぼっちには、させませんよ〜…、父さん…(ニッコリ)。
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