ずっと、待ってるんだ。
「ん」
「わっ!…なんですか」
「奢り」
「はぁ…」
背後からひょっ、と出てきたペットボトルにシルバープレアーが驚いた声を出せば、それを差し出した本バであるウマは口元を愉快そうに吊り上げた。
「ありがとう、ございます」
「いーえ」
そのウマとシルバープレアーは結構な年月、付き合いがある。
とはいっても走っている場所は遠の昔に別れてしまったのだが。
「今回も凄かったな」
「いえいえ、…先輩もあと少しだったじゃないですか」
「G1皆勤野郎に言われてもな」
「……すみません」
「冗談だよ冗談」
G1戦線に挑み続ける後輩とG3に出走するのが関の山な先輩。
それがシルバープレアーとそのウマの関係だった。
そして今はその関係すら途切れてしまいそうな程に疎遠になってしまっている。
「お前さあ、いつまで走るんだ?」
「……?どういう意味です?」
「そのままの意味だ。このまま走ってていいのかって聞いてるんだよ」
「……」
沈黙が流れる。
「気持ち悪い走り方しやがって」
「気持ち悪い、って…」
「俺はさァ!」
「…はい」
「会ったことないけど、テレビで見てるしかなかったけど!」
「アイツはもう、いないんだよ!」
いつの間にか、掴まれていた胸ぐらにぼんやりとした目をする。
「勝とうと思えば勝てるくせに!やろうと思えば
「…買い被りすぎ、ですよ」
「でも、待ってんだろうが!!!!」
言葉が止まる。
それは図星だからでは無く、何を言っているのか理解できなかったからだ。
しかしそれも一瞬のこと。
すぐに何を言いたいのかを理解したシルバープレアーの顔色はみるみると青ざめていく。
それを見ていたウマは、どこか悲しげな顔をしていた。
「だから、
「違う」
「あぁ、そうだろうな。お前は誤魔化すのが上手いから…自分でさえも」
「違う、違う違う違う!!」
「違わない!!……頼むよ、最悪なことになる前に」
「うるさい!!!」
シルバープレアーは叫ぶように言うと、逃げるようにしてその場を走り去った。
残されたウマは何も言わず、ただ俯いて拳を強く握っていた。
*
まるで煽っているかのような走りだ。
フラフラと、またはスイスイと。
【誰か】を待っているかのような走り。
【誰か】が、追いついてくれるのを待っている走り。
それを見た自分は、何を思ったのか
勘違い、して。
「…、」
目を見た。
どうしようもなく、失望し、絶望した目を。
『あぁ、違う』とでも言うような、そんな、そんな…。
【銀の祈り】:
シルバープレアー。
わかる人にはわかる感じに変遷している。
長年に渡り積み上げた経験からしようと思えば『あの走り』ができなくもないがしないウマ。
とっておきは、とっておきだから。だからこそ、とっておくの。
それに加え、いつも本気ではあるが"あの頃"の真剣さは徐々に薄れていっている。もしくは熱意というかもしれないけれど。