さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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心底からの憐れみを込めて。



誇りが見たのは"ナニ"だったのか

プライドシンボリが凱旋門賞へと出走を果たしたのは、ある意味当然の帰結であったと言えよう。

無敗の二冠バ兼クラシック(クラス)でのジャパンカップと有記念の制覇。

もしくは祖父シリウスシンボリと父シルバーチャンプの無念を晴らすために。

 

そんな周囲の意気込みに、陣営も応えるべく勝負服のデザインを海外遠征用に新たに誂えたり等、万全の準備をして臨んだのだが……結果は惜しくも。

しかしそれを差し引いても、同年にドバイシーマクラシック、KGVI & QES、香港ヴァーズを制覇し、GⅠ7勝バとなったと考えれば日本トゥインクルシリーズ史に残るであろう快挙を成し遂げたことは間違いない事実だ。

がしかし。

 

プライドシンボリのトレーナーである彼には忘れられない出来事があった。

それはあの凱旋門賞の折。

本来なら勝てるはずだったプライドシンボリが急に速度を落とし。

それを心配して、すわ故障かと駆け寄ればキョトンとした顔をされて。

 

「…そんなに慌てた顔をして、どうした?」

「どうしたもこうしたも…!」

「脚?脚がどうしたって…嗚呼、」

 

サッサと。

何も問題ないと示す風に脚を振る仕草に安堵の息を。

でも同時に、なら何であそこで()()()()()()()、と問えば。

 

 

父から、その"影"についての話は聞いていた。

もしかしたら会えるかもしれない、と見送りの際にヒソヒソと。

親愛なる父の言葉を疑う気持ちはまったくもってなかったのだが…。

 

「先達よ───手合せ、願おう」

 

まさか、()()()

いつもの、自らの作戦を忘れてまで現れた"影"と死合う。

普段の自分なんてかなぐり捨てろ。

そうしなければ指先ひとつ掠らない相手だ。

 

…ああ、なんという至福だろうか!!

この瞬間だけは、自分が自分でいられる気がして。

だから、だからこそ。

もっと速く。

もっと疾く。

もっともっともっと!!!

まだ足りない。

まだまだ全然足りていない!!

こんなんじゃあダメだ。

そう思った。

瞬間。

 

「───────は、」

 

息も絶え絶えで自分を追い抜いた後続によって。

"影"が。

消えた。

途端、それまで自分に取り憑いていた熱が、消え失せる。

 

そこからはもう、ゆるやかに走るばかり。

何とか掲示板に乗るように、というだけは考慮して走り終えた先には自分を睨みつけるさっきの後続バ(1着)

 

唇が「どうして」と戦慄くのに『無粋なことをした、お前がそう言うのか』と思わなくもなかったが。

これだけは、

 

「嗚呼、」

 

言って、

 

───貴殿らには、()()()()()()んだな。

 

おきたくて。

 

「…可哀想に」

 





そうして、ニコリと嘲った。

【一等星よりいずる誇り】:
プライドシンボリ。
父シルバーチャンプ母父シリウスシンボリ。
主な勝鞍は皐月賞.日本ダービー.ジャパンカップ.有記念(クラシック級)、ドバイシーマクラシック.KGVI&QES.香港ヴァーズ(シニア級)。

実は凱旋門賞に出走していた系ウッマ。
んで、お察しの通りに"影"を見た。
普段はシンボリクリスエスっぽい性格だが、強い相手を見ると滾るタチでもある為ノリノリで"影"と死合っていたら無粋なことされて興ざめに。

そして、周囲に「お前勝てたはずだろ」って目線を向けられた結果、「キミたち視えなかったんだw(要約)」した。
最初から最後まで、プライドシンボリの目に入っていたのは…ね?

それを考えると1着バさんはどっかでプライドシンボリにプライド折られてたらなおよしですね〜…(ニッコリ)。
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