俺は、最初から最後まで、お前の目には入っていなかったのか。
あの日の俺は、お前の国で言うところの『天狗』であったのだろう。
祖国を飛び出しては様々な国の大レースで勝って。
『世界最強』なんて皆から称されながら周りを居丈高に見ていた俺の前に現れたお前。
ぼうっとした、ヤツだった。
三冠こそ惜しくも逃したが一番人気に堂々と推された日本の期待バ。
"プライドシンボリ"というそのウマは二番人気に推された俺の隣へとゲートインしては。
「ウソ、だろ…?」
いつも通りの、勝ち確定の。
いつも以上に絶好調だった俺を軽々と、バ体を合わすこともなしに追い抜いて。
そのままゴールまで駆け抜けていったのだ。
『やはりプライドシンボリだ!その誇りに陰りなしッ!!』
それから。
陣営も俺も、お前に負けられないと。
ドバイシーマクラシック、KGVI&QESとお前が出るレースには必ず出て。
だが結果は散々なもんで。
運が悪かったからだとか、調子があまりよくなかったからだとか。
そんな、言い訳すらできないほどにお前に追い抜かれては、その背を追うしか出来なくて。
でも。
(今度こそ、今度こそお前に──ッッ!!)
あの凱旋門賞で。
いつもの戦法を、
肺も脚もおかしくなりそうなころにはもう、差は10馬身以上開いていて。
それでもまだ諦めきれない俺は必死になって追いすがって。
そして、やっと届いたと思った瞬間にはもう、お前の姿はなく。
ただただ、歓声だけが耳に響いていたんだ。
『おめでとう、おめでとう!』
『おめでとう、───────』
違う。
違う、違う違う違う!!!!
これは…俺の勝利なんかじゃない!!
観衆も陣営も俺のことを祝福するが…!
「な、んで…!」
息も絶え絶えの俺とはまるっきり真逆に涼しい顔で軽くストレッチをしているお前に、プライドシンボリに、近づく。
すると奴はこちらを一瞥してきては。
「…そうか、貴殿には」
視えなかったんだな。
そう言って、俺を哀れんだ。
そして「おめでとう、一着バ殿」と白々しい科白を吐いては気だるげにターフを去っていった。
哀れだ。
こんなの、哀れでしかないだろう。
周りはやっとお前に勝った俺を手放しに祝福するのに、あの
本当の勝者は俺ではなく、──
お前なら、息も絶え絶えで追い抜いた俺などすぐに差し返せただろう。
なのにそれをしなかった理由は簡単で。
───貴殿には、視えなかったんだな。
心底から。
残念そうで、…それでいて。
───可哀想に。
脳焼きホース:
【一等星よりいずる誇り】にプライドなどをズタボロにされた可哀想な御方。
【一等星よりいずる誇り】よりも歳上。
たぶん陣営含め【一等星よりいずる誇り】に脳を焼かれている。
【一等星よりいずる誇り】の背を誰よりも見ては、その背を追い抜いた時にする顔を知りたかった。
でもそれを何とか成した結果、見せられたのは心底からの哀れみと嘲りで…。
もうぐっちゃぐちゃですわ〜(白目)。
加えて陣営+ファンからも「やっとプライドシンボリにリベンジできたな!」と祝福される!!
これぞ試合に勝って勝負に負けたってヤツですわ!
これで日本へのトレーナー打診があって、来日してみたら【一等星よりいずる誇り】と隣室だったりとかしたら最後……ね。
【一等星よりいずる誇り】:
プライドシンボリ。
G1を7勝したので名家から「ウチん家でトレーナーしなよ!」との打診があり、それを快諾したすがた。
脳焼きホースのことは「あぁ、
本バにとってはメジロシルフィードという宿敵兼初恋がいるし(なお。まぁウマ世界では道半ばでの引退になっているのですが)。
またサクラスタンピードという親友がいるので…。