さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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幼なじみであり、親友だからこそ。



桜吹雪と一等星

「お疲れ様でした」

 

いつもの元気な声が嘘のように穏やかな声で告げてきた親友-サクラスタンピードにプライドシンボリは瞬きをひとつすることで頷きとした。

その行動でそうだと分かるくらいにふたりの付き合いは長いのである。

 

「…驚きましたよ」

「心配を、かけてすまなかった」

 

ふたり。

思い返すのは同じこと。

 

「スタン」

「はい」

「お前は…分かるだろう?」

「えぇ」

 

高松宮記念、宝塚記念と制し、ムーラン・ド・ロンシャン賞を制しに来ていたサクラスタンピードと。

ドバイシーマクラシック、KGVI&QESを制し、凱旋門賞を制しに来ていたプライドシンボリ。

その両名が、両名とも…。

 

「どうだった」

「まぁ…、きっとそちらにいた方のが調子がいいんじゃないでしょうか」

「そうか」

「リソースを注いでいるんでしょう。それだけ"あの方"にとっては」

「…印象深いレース、か」

 

視えていたものは、濃度こそ違えど互いに同じ。

同じように視て、同じように、追い駆けた。

ずっとずっと、焦がれていたものを。

だが。

 

「…シルフィーに、怒られそうだ」

「、」

「『何で最後まで全力で走らなかったんですか!?』とか何だとか言って…。うん、言い訳を考えておかないと」

 

出された名前にサクラスタンピードは人知れず口を噤む。

"シルフィー"こと、メジロシルフィード。

無敗の二冠バであったプライドシンボリにはじめて負けを叩きつけた長距離の女帝…。

 

「スタン?」

「…いえ、何でもないです」

 

自分を心配そうに見つめる親友にサクラスタンピードは笑みを形作り。

「嗚呼、やはり知らされていないのだ」と思考する。

どこまでだかは定かではないが、連勝街道をうなぎ登りに突き進んでいたプライドシンボリに知らせるべきではない、と判断したか…。

そこまでを思考して。

 

「言い訳は自分ひとりで考えてくださいね」

「…分かっている」

 

 

何も知らないまま、すやすやと隣で寝息を立てる親友にサクラスタンピードはまた静かに息をついた。

 

伝えるべきなのか、または伝えないべきなのか。

こちらで合流を果たした時よりしょっちゅう「シルフィーは、元気だろうか」と口癖のように漏らしていたところから察してはいたが。

 

プライドシンボリにとって、サクラスタンピードとメジロシルフィードはそれはそれは大切な幼なじみらしい。

面と向かって、そう告げられたことはないのだが長年の付き合いがあるが故に分かることもあるもので。

が、しかし。

 

「どっちが、残酷なんですかねぇ…」





【一等星よりいずる者】:
プライドシンボリ。
幼なじみふたりがいっとう大切なウッマ。
まだ何も知らない。が、【桜吹雪】が今回においての自分の気持ちを理解してくれたのでニッコリ。
それはそれとしてこの後は【桜吹雪】と一緒に香港へと突っ込む。

【桜吹雪】:
サクラスタンピード。
主な勝ち鞍:NHKマイル.スプリンターズS(クラシック級)、高松宮記念.宝塚記念.香港マイル(シニア1年目)、ジュライカップ.香港スプリント(シニア2年目)
しれっと芝3階級制覇をしているヤベェウッマ。
【一等星よりいずる者】とは親友同士&言いたいことを察せる仲ではあるが…。
【風の妖精】に関するある事実を告げるべきなのかどうかを悩んでいる。

【風の妖精】:
メジロシルフィード。
牝馬の身ながら菊花賞、天皇賞・春を制した。
【一等星よりいずる者】と【桜吹雪】とは幼なじみであり、ヒエラルキートップでもある。
ゴールドカップに出走していたはずだが…?
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