さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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っぱ、世代が経てもあの【一族】の血を引いてるから…。



ずっと、いっしょ

「…シルフィード」

「いま、大丈夫ですか?」

 

ある静かな邸宅にて、控えめになされたノックに、また静かな返答がある。

キィ、と開かれたドアには真っ暗な部屋でぼんやりと陽光に照らされるひとりの車椅子に乗ったウマ娘の姿。

 

「…おはよう、ふたりとも」

 

そのウマ娘の名はメジロシルフィード。

この邸宅に尋ねてきたプライドシンボリ、サクラスタンピード両名の幼なじみである。

 

「今日は…散歩がてらピクニックに行きませんか?」

 

暗い部屋の中で、サクラスタンピードが跪いてメジロシルフィードに乞う。

その様子を見てみれば確かに、彼女の肌は空恐ろしいほど白かった。

それはまるで雪原のような色合で。

そして、そんな彼女を支えるように寄り添っているのは部屋の静寂もかくやといった様子でいるプライドシンボリだ。

 

「…そうね。せっかくだし、行きましょうか」

 

 

メジロシルフィードの車椅子を押すのはいつもプライドシンボリの役目だった。

本当ならサクラスタンピードと交代でやった方が疲労なり何なりが分散されて良いはずなのだけれど、プライドシンボリはその役を譲ることは決してなかったし、メジロシルフィードとサクラスタンピードもまたそれを良しとしていた。

だから今もこうして、彼女はプライドシンボリに押されながらゆっくりとしたスピードで外へと向かうのだ。

 

「「「……」」」

 

カタカタと、車輪が回る音。

燦燦と照らす太陽。

穏やかに吹き抜ける風。

きっと誰もが「良い日だ」というだろう場所で、三人はただ黙り込んでいた。

……いや、正確に言えば違うかもしれない。

ただ静かに、そこにあっただけだから。

そこには言葉なんてものは必要なくて。

だって三人ともが知っていたからだ。

今この時だけは、どんな言葉よりも雄弁なものがあることを知っているから。

 

「……ねぇ、ふたりとも」

 

ふっと、メジロシルフィードが告げる。

 

「わたしに、会いにこなくてもいいのよ?」

 

それは。

あまりにも『普通』な声音であった。

「今日の天気は」などと世間話の一環のような、そんな気軽さであった。

がしかし。

 

「……」

 

それを聞いた瞬間、サクラスタンピードとプライドシンボリの顔色がサッと変わる。

 

「……どうして? わたしに会いに来ることは元から義務でもなんでもないわ。それにあなたたちは忙しいでしょう?」

 

メジロシルフィードの言葉を聞いて、サクラスタンピードは思わず振り返り…プライドシンボリの表情を見て、ひくりと喉を引き攣らせた。

 

「…シルフィー」

「…なぁに」

 

何故なら。

プライドシンボリが怒っていたからだ、それも長年の付き合いの中でも見たことがないほどに。

 

「……俺たちは。いや、()たちは、キミに縛られることを嫌だと感じていない」

「えっ?」

 

メジロシルフィードは驚いた顔をしてみせた。

だが、プライドシンボリの目にはなんの色もなくて。

心底より、『それこそが真理だ』と、そう言わんばかりの顔つきをしていたものだから。

 

「むしろ、僕もスタンもそう…望んでいる…」

「……」

 

メジロシルフィードは何も言えなかった。

何も言うことができなかった。

そしてその沈黙こそが答えだとばかりに、プライドシンボリはそのまま続けた。

 

「だからキミが心配することは何ひとつない。そうだろう?」





───幼なじみ、なんだから。


三人組:
プライドシンボリ&サクラスタンピード&メジロシルフィード。
自分たち三人さえいれば、それでいい…してる幼なじみ。
多分三人だけにしか通じないことがたくさんありそう。

メジロシルフィードは幼なじみふたりを「帰さないと」と思っているけど、ふたりが自分の傍にいてくれるのが心地いいし、プライドシンボリは最後のひと押し兼ガソリンの役目で突っ走る。
そんな中、サクラスタンピードは常識人かと思いきやどうせ同じ穴の狢なので大切で仕方ない幼なじみふたりと過ごせる毎日を享受している。

誰も、止めるつもりがまったく無い関係なんだ。
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