さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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生存√での、あるお年寄りと若人の話。



これもまた、夢のVS

幼いころの記憶を覚えている、なんて普通そうないことだろう。

どこかのテーマパークのマスコットキャラクターの着ぐるみとか、プールサイドで走ったら滑って頭打ったとかの記憶をぼんやりと覚えているくらいが関の山ではないだろうか。

 

俺もまぁ、大体はそんな感じだ。

けれど、たったひとつだけ詳細に記憶していることがある。

 

『やぁ。キミ、ひとりならお兄ちゃんと遊んでくれないかい?』

 

情景は家の真ん前にある小さな公園。

保育園に入るか入らないかどうかの年齢の俺にそう話しかけてきたその人。

 

『ひとりで寂しくない?』

『…もーすぐ、にいちゃんになるんだ』

『そりゃあ目出度い』

 

母親は俺が知らねぇヤツに絡まれてたら容赦なくドロップキックをかますような強い女だった。

この時は下のガキがおなかの中にいた時だったからそんなことはなかったが。

 

『お父さんはどんな人?』

『プレアーはカーチャンにいつもベソかかされてる』

『あらら…』

『でも、おれはプレアーみたいになりたい』

『…そう。どうして?』

『いっぱいはしりたいから』

 

俺の父-シルバープレアーは体の丈夫な人で、たくさんレースを走っていた。

生来走ることは好きだったから父親のようにたくさん走りたいと思っていたのだ(なお勝ち負けはまた別のものとする)。

 

『なるほど、いいね』

『あんたは?』

『え?』

『あんたは、なにになりたいの』

 

深くフードを被ったその人が、問いを投げかけた俺を見て惚けた顔をする。

何秒か見つめ合う静かな時間が続いたあと、

 

『僕、は』

 

 

燦々と太陽がターフを照らす。見上げた空は憎いくらいの快晴。

視線を戻して、歩を進めていくとそこには小さな人影があった。

俺と、同じ配色の勝負服を着た人影が。

 

「やぁ、」

 

俺の気配に気がついたのか、人影が振り返る。

帽子とゴーグルに遮られて、その顔を伺うことはできない。

ただ笑う口元だけが見えるのみ。

 

「キミ、ひとりならお兄ちゃんと遊んでくれないかい?」

「…もう『お兄ちゃん』なんて歳じゃないだろ、

────シルバーバレット」

「ひっどいなぁ」

 

ターフにいるのは俺とシルバーバレットだけ。

たったふたり、相対する俺たちにかけられる歓声はない。

 

「調子はどう?問題あるなら仕切り直すけれど」

「それはお前の方だろ、██歳の老いぼれの癖に」

「おい、年齢は禁句だろうがよ!?」

 

そんなおふざけをしながら、ゲートへと向かう。

 

「…なぁ、シルバアウトレイジ」

「ンだよ」

 

 

───僕を、愉しませてくれよ?

 

 

ぞわりとクる威圧にピクリと指が反応する。

それでも変わらず獰猛な怪物の笑みで熱視線を贈る『伝説』に挑戦者は、

 

「そりゃあコッチのセリフだっての!」

 

そう笑って宣戦布告をするのだった。





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
子どもの頃の将来の夢は父であるシルバープレアーみたいに(いっぱい走れるように)なること、だった。
銀弾のことは「相変わらず元気なジジイだな」と思っている。
…アンタ、俺がチビの時でも結構な歳だったよな?
でもそれはそれとして手加減するつもりもないし、「老いぼれ」と煽ったりもする。が、好きだし憧れだし…という感じに内心慕っている(しかしツンデレ)。


僕:
シルバーバレット。
ふらっと血縁の子に会いに行ったり行かなかったり。
【銀色の激情】に対しては「元気いっぱいでいいね!」と思っている。
…なんか少しマブダチに似てるかも?
でもそれはそれとして本気でいくし、「着いてこれるか?」と煽るし、「生き残りだと思え」する。
まだまだ勝利への執念etc.が衰えていないんだ。生涯現役です。
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