さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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『世界』を、欺け。軸の話。



欺くのは、『世界』だけでなく

どうも、僕です。

家族からは『チビ』と呼ばれて育てられています。

 

僕はとても小さいウマです。

同年代の子とは会ったことがありませんが、少しばかり歳の離れた妹にも抜かれている身長と体格を鑑みるに小さいことには変わりないでしょう。

 

ですが、そんな僕を家族みんなが愛してくれます。

お父さんの背中に乗せてもらいながら家の庭を走り回ってもらったり、妹たちと一緒に絵を描くのが好きです。

僕はこの家族が好きなので、これからもこの幸せが続くことを心から願っています。

さあ、今日はどんな一日になるでしょうか?

 

 

「こんにちは」

 

その日は。

僕の大好きなひとが家にやって来ました。

"シラミネさん"。

やさしい男の人で僕が駆け寄るといつも抱き上げてくれます。

僕が大好きな、少しヒゲでジョリジョリする頬擦りだって、いっぱいしてくれるのです!

 

「ふわぁ……今日も可愛いね!」

 

そして今みたいにぎゅっと抱きしめてくれるんです。

だから僕も負けじと顔を押し付けてみたりします。

そうするとまた強く抱きしめ返してもらえてとても嬉しい気持ちになります。

 

「おや、…キミか」

「あぁ、ご無沙汰してます──バックさん」

「おじいちゃん」

 

そうしていると、おじいちゃん-名前は『ホワイトバック』と言います-が、ゆっくりとした足取りでこちらに向かってきていました。

 

「最近よく来るネ?」

「えぇまぁ……」

「何か用でもあるの?」

「いえ、そういうわけでは……ただ近くまで来たものですから挨拶だけでもと思いまして」

「ふぅん、相変わらず律儀なヤツ」

「ははは」

「ほら、チビ。おじーちゃんの腕においで?」

「…ゃ、」

 

おじいちゃんならいつだって抱っこしてもらえますが、シラミネさんに抱っこしてもらえるのはほんとうにほんとうに幸せな時間です。

それに今は二人だけの時間を邪魔されたくないという想いもありました。

 

「あらら、嫌われちゃったカナ?」

「…………」

「大丈夫ですよ、僕が帰ればいつもと同じようになります」

「だと良いんだケドねェ」

 

 

ひどく絶望した目をした、"白峰(しらみね)"という男を連れ帰ってきたのはホワイトバックであった。

自らと、または自らの家族と同志たりえるだろう男を連れ帰らない手はないだろう。

しかし、それがまさかこんなことになるとは……。

 

「なんとも嘆かわしいことだヨ」

「申し訳ありません」

「謝ることじゃないサ、お前はよくやったよ」

「ありがとうございます」

「でもこれで終わりだなんて思わないデネ?」

「はい、分かってますよ」

 

トレセン学園にてトレーナーとして働いている白峰には極々時たま"あるウマ"についての探りが入ることがあった。

しかもそれはレースの世界のみならず世間一般でも権力がある家からのもので、下手に逆らえば自分の首どころか親族の身柄すら危うくなる可能性も…だったのだが。

 

「あいっっっかわらず、飽きないよねェ…」

「そうですね…」

 

はやく、諦めればいいのに。

どちらともなく呟いた言葉の意味を知るものは誰も…。





"シラミネさん":
僕がとっても懐いているヒトミミ。
中央トレセン学園でトレーナーをしている。
僕の祖父であるホワイトバックとは当バ比で結構仲がいい(好感度は暖色)。
ちな時折、名家方面の方々から名も顔も知らぬ"あるウマ"のことで圧をかけられているようだが毎回知らぬ存ぜぬで通しているらしい。
…穏やかでお人好しそうな容貌とは裏腹に腹芸が上手そう(小並感)。

僕の祖父:
ホワイトバック。
危なくて、でもかっこよいおじいちゃん。
何でもは知らないけど知ってることは裏の裏から表の表まで知っている。
基本は家族に近づく誰も彼もを無条件に追い払うが、自分が拾ってきた"シラミネさん"だけは家族ぐるみで可愛がっているとか。
え?何で可愛がってるかって?そりゃあ…。

───"あの子"の、大切なヒトだから…ネ?
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