さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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今日も今日とてぐちゃぐちゃ。
孫に自分たちの"もしも"を重ね合わせてんだ。



目に映しては夢想して

「いいなァ…」

 

ボソリと低く呟いた嫉妬の言葉に、隣に座るキミが強く僕の手を握る。

目線の先には楽しげに観客に手を振るお互いの孫。

かつての自分たちもあんなだっただろうか、と思考しても答えはもうない。

あるのはたらればに似たどうしようもない不可逆のみだ。

 

「ネ」

「…うん」

「僕がサ、初めっからリミッターをぶっ壊せる存在だったら、ああなれたカナ?」

「……」

 

羨ましい。

羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい…。

 

妬 ま し い 。

 

僕だって!

あんな風にキミと切磋琢磨したかった!

勝ったり負けたりして!

同じ時間を過ごしたかった!!

あの子のように心の底からキミの隣で笑いたかった!!!

 

「…………ごめんネ、ワガママ言ってるのは分かってるヨ?でもさぁ、どうしても」

「……」

「もし僕が強かったなら、もっと早くあのチカラに近づけていればって……そしたら一緒に戦えてたのかなって思っちゃうんダ……」

「……そうだね」

「それに、もしもの話だけどさァ、そうやってたら僕らの関係も変わってたカナ?」

 

僕が戦いたかったキミは、もういない。挑めない。

たとえ挑んだって、自分自身に満足できない。

全盛期なんて遠に過ぎた体。

純粋な気持ちなんて忘れてしまったココロ。

ふたりで何も考えず、楽しく走れていたのはいつまでのことだったろう。

……いや、違うか。

()()()()()()()、楽しかったんだ。

 

『あ、じいちゃん!』

『あ、マジだ』

 

そんな思考をしていると目敏く僕らを見つけたらしい孫たちが駆け寄って。

『どうだった?』とか、『次は俺が勝つから』なんて口々に言う彼らを見ていると思わず唇を噛んでしまった。

プツリ、とした感触と途端に広がっていく味。

それに気がついたのはもちろん隣にいるキミで。

 

『え?あぁ、ありがと爺さん。おら行くぞ』

『うえっ!?もうちょっと話した…待って!耳引っ張んなよ!!』

 

孫たちがウイニングライブの準備だと去っていく。

それを見る暇もなく、支えられては車に押し込められて帰ることに。

 

「…んーん。あの子のレース見れたの嬉しかったから、ダイジョーブだよ」

「キミがこうやって誘ってくれただけで…」

 

綺麗だったころの僕はいつしか消えてしまって。

ドブみたいな色に染まったカイブツしか残らなかったの。

キミに、【英雄】に倒してもらいたかったカイブツしか…、ネェ?

 

「僕さ」

「うん」

「キミになら、」

 

█されても、よかったよ。

そんな言葉をひとつ、自嘲しては呑み込んだ。





【銀の祈り】:
シルバープレアー。
ちょっとこじらせすぎて一族の因子が漏れ出ている。
またの名を感情の重さをどうにも出来なくてヒビが入っている…みたいな?
まぁ互いに隠すのが上手かったからねぇ…。
隠せなくなったらもう、ねぇ…?

【英雄】:
色々と漏れ出ている【銀の祈り】を見ては「なんで気づかなかったんだろう」と後悔。そういうところが【英雄】だね。
でも【銀の祈り】の狂気とも呼べる自分への執着に嬉しく思ってしまうのもまた事実。
けどもっとはやく話し合うなり何なりが出来ていたら…なんて。
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