さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ウマ娘軸の話。


◆ 唯一の友人

いつも通りの朝だ。

買っておいた6つ入りのバターロールを2つ食べて家を出る。

外はまだ人通りが少ない。車だけを気にしておけばいいから楽なのだ。

 

学園もまだ人がいる時間ではない。

上履きを履き、通い慣れた教室へと入る。

最近読み進めている小説をパラパラとめくっているとドアの開く音がした。

 

「おはよう、シルバー!」

 

僕の聞こえずらい耳にも聞こえるほど大きな声を出しているのはクラスメイトのミスターシービー。

ニコニコと笑い、僕の座る席までやってきた彼女は近くの机の椅子を取り、僕に向かい合うように座った。

 

「今日も早いね」

 

彼女が話しかけてくる。

それを無視して本を読み進める。

 

「あれ、今日は耳の調子が悪い?ねぇ」

 

するりと手の甲を撫でられ、思わず肩が跳ねる。

心臓を落ち着かせ、目の前にいる彼女を睨めば「やっとこっち見た」と嬉しそうにする。

 

「なんだい、ミスター」

「えへ。今日こそ走れるかな〜って」

「…仲の良い彼女らと走ればいいだろう」

「え〜、×××(エース)とかと走ってもいいけどさ〜」

 

私が走りたいのはキミなんだよねぇ。

 

ふわふわとした口調だが、僕を見つめるその瞳は雄弁で。

獲物を狙う肉食獣のよう。

そう見られるのに居心地が悪くて、畳んだ小説の角で軽く叩いた。

 

「あいてっ」

「うるさい」

僕は、あまり人が好きじゃない。

1人で生きていけるくらいの能力はあるから1人でいい。

話しかけられても素っ気なくしておけば人は去っていく。

それでいい。

僕にとって走ることさえできたら後はどうでもいいのだ。

 

「…」

 

左顔面を手で覆う。

引き攣るような痛みから今日は雨が降るのだろうと簡単に予想できた。

 

「雨が降るなら、ミスターは…」

 

アレは雨の日を好んでいる。

なら今日もびしょ濡れで帰ってくるのではなかろうか。

何故だか、僕は彼女の家の合鍵を持っている。

風呂を沸かしてやって、温かい料理を用意してやらなくては。

 

病院からの帰り道、そんなことを考えた。

私とシルバーとの出会いはそう珍しいものではない。

同じクラスになって、素っ気なく自己紹介する彼女が気になっただけのこと。

私は昔から人と仲良くなるのが得意だったのでいつも通りに彼女にも話しかけにいったのだ。が、

 

「…」

 

完全に無視された。

そもそも彼女には友達がいないようだった。

いつも1人で黙々と何かをしていた。

 

「キミ…、流石にそれはどうなんだ」

 

それが変わったのは、ある日のスーパーで。

冷凍食品を買い込む私を怪訝そうに見やる彼女。

言い訳をする私に溜息を吐いた彼女は「…仕方ない」と小さく漏らして、「僕が料理を作る」と言った。

 

「ねぇ、シルバー。今日のご飯は?」

「…ミスター、そろそろキミも簡単な料理くらい覚えたまえよ」

 

彼女の料理は美味しかった。

それを理由にして、私はシルバーに絡みに行った。

料理が不得手なのは本当のことだし。

でも、

 

(こんな駄目な私をお人好しの貴女は放っておけないもんねぇ?)




僕(シルバーバレット):人嫌いなウマ娘。一人暮らし。病院通いが多い。
不思議な色の抜け方をした芦毛をしている。
誰とも関わりたがらないが絡んでくるミスターシービーにだけは仕方なしに応対している。
周りには知られていないがミスターシービーの食事の世話をしていたりする。

ミスターシービー:三冠馬になるウマ娘。
誰とも仲良くなれるタイプだが唯一自分に素っ気ないシルバーバレットに興味を抱く。
その気になれば料理ができるがシルバーバレットに世話を焼かれたままでいたいとそのままにしている。
実はナチュラルにシルバーバレットに自分の部屋の合鍵を渡している。
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