【追記】
誤字報告ありがとうございます。
ジャパンカップのあと、不甲斐なさから泣き出してしまった後輩を慰め、その折に「多分引退するだろうから有馬記念は出ないよ」と言ってしまったのだが、
「…海外遠征?」
引退する気マンマンだった僕に先生からかけられたのはそんな言葉だった。
「僕って海外遠征に行けるほど賞金稼いでたっけ?」
「いや、それがな…」
先生から説明してもらった。
なんと、URA・シンボリ家などが僕の海外遠征に資金援助をしてくれるのだという。
なんだその破格の対応と流石に驚いていると「それほど、キミが勝ったジャパンカップが衝撃的だったんだよ」と褒めてくれる先生。
「いや…、まぁ確かにアレは自分でも凄かったと思うけど…。
多分もうあの走り方はしないよ」
「なぜ?」
「だってあんなの、自分の体を無視した走り方だ。
僕が何も怪我したことないウマ娘だったらアレを好きなように使えるだろうけど…、先生はよく知ってるよね?」
「…あぁ、」
あの日、第4コーナーから突如として世界が変わった。
世界が白黒になって、歓声も聞こえなくなって。
地面を踏みしめる足が本当に軽かった。
いつもより本気で走っていたから疲れていたのにそんなこと、無くなってしまったかのように。
風を切り裂いていく感覚が嫌でもわかった。
そして、正気に戻った後に見たのがあの、自分でも訳の分からないレコードだった。
*
私がトゥインクルシリーズを見始めたのはほとんどの人と同じようにオグリキャップさんが現れてからで。
多分あの年代からトゥインクルシリーズを見始めた人たちのほとんどはオグリキャップさんに魅せられていたのだろう。
でも、その日は違った。
私が初めて現地参戦した東京レース場。
肌寒くなってきた秋の終わり、誘導役のウマ娘の人が出てきただけで湧き上がる大歓声。その中にいた貴女。
その人は本当に小さかった。
ゲートに並んでいる姿を見るとその間だけペコンと山がへこんでいるような。
13番人気だったその人がまさか勝つなんて誰も思っていなかった。
ゲートが開いた瞬間、トップスピードで駆け抜けて行く姿。
誰も、その姿に追いすがることができる人はいなくて、グングンと後ろを引きちぎりながら前に進んで行った。
その姿を見て、誰もが「あぁ、あの娘はもうダメだな」と思ったことだろう、私だってそうだったのだから。
けれど、貴女は後ろを引き連れたままだった。
貴女が一向に垂れてこないことに焦った後方が追い込んできたけれど既に遅かった。
瞬間、大地が爆ぜる。
黒い勝負服も相まって、それは小さな弾丸のようだった。
後ろは彼女に追いすがることしか許されず、彼女の走りにいつしか誰もが熱狂していた。
誰が呼んだか"2分19秒の怪物"。
あの日、彼女に魅せられた私たちは彼女のようなウマ娘を今か今かと待ちわびている。
僕:海外遠征に行くことになりそうなウマ娘。
後輩のオグリに引退するって言った手前、少々気まずい。
僕の固有を考えると近いのはセイウンスカイ。
第4コーナーで先頭だったら加速に、2位以下を引き離せば引き離しているほど加速力アップって感じ。とんでもない勢いでかっ飛んでいく。
僕の固有で出る時の映像は、踏み込みで黒いイナズマが出て(父ヒカルイマイの電撃の差し脚イメージ)、黒い突風を身にまとって駆け抜けて行くイメージ。