私(またの名を銀弾♀)√にて、あるウマとの夢の配合が成された話。
ある由縁で、そのウマに恩があった僕は初対面の時にいきなり礼を述べた。
述べられた本人の方にしては困惑するしかなかったようだが。
「あぁ…厳しかったんじゃない、あの先生は」
「はい、とても」
誰もが匙を投げた脚を、先生だけが諦めなかった。
だから今があるのだと、そう思うと感謝しかない。
「……先生は、あなたに夢を見たと言っていました」
「そう」
思い返す。
『お前を救わねぇと、俺はアイツに顔向け出来ねぇ』と苦い煙草の煙を燻らせながら深く息をついた先生のことを。
『俺は、アイツに"奇跡"を見た』
『はじめは土下座してまで頼まれたからやるだけやっただけだった』
『どうせ、無理だと思っていた。やるだけやったんだからって、自己防衛にまで走ってた』
『するとさ、どうだよアイツ。…ああなったのがまるでウソみたいに!』
そう語る先生の目には。
「あの…?」
「は、はいっ!」
頭を振って先程までの思考を追い出す。
そうだ。
そうだ、今は。
「まさかこんなおばさんのところに貴方みたいな若い人が来るなんて」
「え、あ、いや…」
クスクスと笑う姿に思わずドキリとする。
「まぁ、でも、貴方なら大丈夫ね。きっと」
「何がですか?」
「だって貴方、いい目をしているもの」
そんなことを言われたのは初めてだった。
「では、また縁があったら逢いましょう。ね?」
───【異次元の逃亡者】さん。
*
俺が見た"奇跡"がターフを去ってから早何年も。
自身の患者だから、と理由をつけて見たのがはじまりだったのに気づけばその軌跡に魅せられて。
これは、どこまで行ってしまうのかと。
コイツは俺が治した脚で何を見るのかと。
ただただ、興味を持った。
その結果が、現状だ。
「お久しぶりです、先生」
そんな物思いに耽っているとかけられた涼やかな声に顔を向ける。
するとそこにはかつて面倒を見たウマと、
「とーしゃん、このひとだぁれ?」
それによく似た
「よう、坊主」
「はい。先生もお元気そうで」
「ねーえ、とーしゃんー!」
「うん、ちょっと大人しくしててね」
親子共によく似ている。
本当に、瓜二つだ。
だが、ひとつ違うところを挙げるとすればそれは目だろうか。
坊主の方は相変わらず真っ直ぐではあれど、どこか俺たちとは違う視座を持っているのようなうそ寒い眼をしていて。
それに比べて子ウマの方はまだ幼く無邪気に溢れているが、それでもその奥底にある何かを感じさせるような灰銀の眼を…。
(……)
ふと。
その灰銀の眼に見覚えを感じた。
それは───。
「…なァ、」
「はい」
「ソイツ、名は?」
「あぁ…。ね、挨拶できるかな?」
「ん〜?うん、できるよ!とっぷおぶすずか!」
元気よく自分の名を名乗った子ウマは続けて己が父と母の名を告げる。
その、あまりにも聞き覚えのある名前に俺は───。
「…なんだ」
「はい」
「世界でも、蹂躙するつもりか?」
「そうなるかも…ですね」
お医者さん:
どこにでもいるお医者さん。
ある時、自らが施した処置ののち"奇跡"を起こしたウマに魅せられてはその世界で知らぬものはないと言われるほどの名医となった。
【異次元の逃亡者】にかつて見た"奇跡"の姿を重ねていたりも…?
【異次元の逃亡者】:
どこにでもいる栗毛のウマ。
お医者さんに助けられてはキッツイ=リハビリを経てターフへと舞い戻った。
リハビリ中に寝物語並に聞かされたお医者さんからの"奇跡"トークの末、リハビリ完治後より件の"奇跡"の元へ
そうして交友を深めた結果、子である【Top of Fast】が生まれたらしい。
【Top of Fast】:
トップオブスズカ。
【異次元の逃亡者】と【最速の蹂躙者】との間に生まれた牡馬。
適性は芝AダA.短EマA中A長A.逃A先G差G追G。
成長率は速10%賢20%。
もちのろんで生まれながらの逃げ馬であり、生まれたよ!と報が入った瞬間より鞍上をでした。さんと白峰おじさんに取り合われた系ウッマ。
どちらが主戦騎手の権利を勝ち取ったとて、調子落としたら…みたいな睨み合いをしては絶対譲らない!してる(確信)。
なお戦法はお分かりの通りの大逃げで、二番手以下はもう脳を焼かれるしかない性能をしている。いや観客の方も脳を焼かれているんですが。
取り敢えず秋天とJCは確実に獲るんじゃろなぁ…という感慨。
性格面では懐いた相手にはとことん懐くが、興味のない相手にはとことん靡かない。
また人の言うことをよく聞き、調教も申し分ないが調教後も走りたがるのがたまにキズとか…?