さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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父親よりはまだマシだけどしっとりしてるっちゃしっとりしてるんだよね…。



【帝王】と!

「おっと…。前を見てなかった、すまないね」

 

ドン、とぶつかって倒れかけたところを何とか踏ん張る。

相手は…雰囲気的に中等部の子かな?

明るいムードメーカーとか、そういう感じ。

とはいえ。

 

「え、ええと、大丈夫?」

 

反応がないと心配になる。

どこか打ったり、脚を捻ったりしたのかなと不安になれば「しるばー、ばれっと?」と僕の名前が。

 

「あぁ、うん。シルバーバレットだけど……」

「……!」

 

途端にその子の顔が明るくなる。

何か良いことでもあったのかと思ったけど、その表情はすぐに曇ってしまった。

 

「どうしたんだい?」

「ううん、なんでもないよ!ごめんなさいっ!!」

「いやいや、待って待って。…よければお詫びに何か奢るよ」

 

 

そうして。

その子-トウカイテイオーの望み通りに『はちみー』という飲み物を奢った僕は同じようにちうちうとストローを吸っていた。

…すごく甘い。

正直なところ、この甘さには慣れることができなさそうだ。

 

「おいしいかい?」

「うん!ありがとうシルバー!」

 

屈託のない笑顔を見せてくれる。

なんだかこっちまで嬉しくなってきてしまうようなそんな笑みだ。

だが。

 

「さっきの」

「なぁに?」

「僕を見て、何か、亡霊でも見たような顔はなんだったんだい?」

 

気になったのだ。

あんな顔をされたら誰だって不思議に思うだろう。

僕の問いに対してトウカイテイオーは少しだけ言い淀んでから口を開いた。

 

「…ボクの尊敬する人がよくあなたの話をするから」

「へぇ、」

 

適当な相槌を打ちながら、他にもまだ理由があるんだろうなぁと察する。

でなけりゃ視線なんて逸らさないだろう?

がしかし。

 

(知りたがりは損するから)

 

黙しておく、ことにした。

 

 

その人のことはよく知らなかった。

何故ならいる世界が違ったから。

その人のことは尊敬する父から時折聞いていた。

父ではなくなった今も、時折聞く。

 

父よりも一歳年上で。

火事やら骨折やら屈腱炎やらで離脱しながらも結局は復帰して。

とんでもない功績を打ち立てては…。

 

今でも、覚えている。

きらびやかな表彰式の中で、受け取る者のいなかった栄光を。

誰もが羨む栄冠を、彼だけは受け取らなかったことを。

そして。

彼がもう二度と走ることはないことも知っていた。

だから。

だからこそ。

 

「テイオー…?」

「何でもないよっ!」

 

今度こそ、あなたを知ってみたい。

そう思って抱き着いた身体は、ふざけてるって思うほど小さかった。

 

「ね、ね、シルバー」

 

呼びかけると「なぁに」と振り向いて。

その顔に、ボクは。

 

(───どうしようもなく、まぶしい)

 

なんて。





【帝王】:
トウカイテイオー。
実質ニアミス?
1991年年度代表バ。
僕のことをあまり知らない。
だから、知りたい。
誰かが語るあなたではない、あなたを。

だがそれはそれとして僕を見ては「シルバフォーチュンと似てるところあるな」と思っている。

僕:
『「奇跡だ」なんて言わせるな』
シルバーバレット。
長子であるために歳下に甘いタイプ。
なので懐かれるとそこそこ()甘やかしてしまう。
また自身が脚の不調に悩まされてきた経歴からそういう子を見るとそれとなく献身する姿も…?

ちな自分に向けられる感情にはクソニブだがそれ以外の察する力は意外と鋭い。
相手の"話したくない"を察すると上手い具合に軌道修正したり沈黙したりしてくれる。
だがそのやさしさ故に墓穴を掘ったり掘らなかったり…。
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