さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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今はこんな感じだけど…みたいな。



*昔の話

───本来なら、この牧場のボス馬になったのは"彼"だったでしょう。

 

そう語るのは██牧場の××さんだ。

××さんのいう"彼"とはシルバマスタピースのことだ。

父はトウショウボーイ、母父はタイテエム。

生まれたその瞬間から思わず見惚れるような隆々とした栗毛の馬体のその馬は、まさにサラブレッドの王道をいくような名馬に見えたという。

 

しかし、のちにシルバマスタピースと名付けられる当時の彼には困ったところがあった。

それは、『ボス馬気質が強過ぎること』。

人に対してはとても従順であり、とても扱いやすい。

だが同族である馬に対しては異常なまでに好戦的であったのだ。

それは同年代だけではなく、歳上である馬にも恐れられるほどに。

まるで、自分がこの群れのリーダー()だと言わんばかりに振る舞うその姿には、さすがの牧場の人々も手を焼いたらしい。

 

その結果、苦肉の策で共に放牧されることになったのがシルバーバレットであった。

今となっては誰もが認める親友だと言われる二頭も当初はまったく仲良くなかったと言い、「とにかくひとりを好む」シルバーバレットと「自分こそがリーダー()だと振る舞う」シルバマスタピースはまさに水と油だったという。

誰もが自分に頭を垂れるハズなのに自然体でいるシルバーバレットが食わないシルバマスタピースが突っかかり、だがそれを聞こえていないかのように無視するシルバーバレット……。

そんなことを毎日繰り返していたそうだ。

 

しかしその毎日がある日突然一変した。

事の発端はシルバーバレットとのふたりきりの生活に慣れ落ち着いたシルバマスタピースが併走を挑んだこと。

そこで完膚なきまでにシルバーバレットに負かされたシルバマスタピースは生まれて初めて敗北感というものを知ったのだという。

そしてそこから徐々に、ゆっくりとではあるが二頭は打ち解けていった。

もちろんそこにはシルバーバレットの優しさや思いやりもあっただろうし、なにより互いに負けたくないライバルとして意識するようになったことが大きな要因であろうと。

 

 

『ね、マス太』

『なぁに?』

『昔さぁ、それもずっとちっさいちっさいころなんだけど』

『うん』

『僕にすっごく絡んできたヤツがいたんだよね』

『』

『しかもソイツめちゃくちゃ諦め悪くてさぁ、ひとりでいたい僕に毎日毎日話しかけてきてたの。…そう考えるとマス太とちょっと似てるねぇ』

『…何が言いたいのさ』

『いや?思い出したから言ってみただけ』

『……。そう』

『マス太?おーい、マス太〜?』

『ごめん…ちょっと、横になるね…』

『マス太!?』





マス太:
シルバマスタピース。
良い子なのは変わらないが、自分と同じ馬には意外とボス馬気質だった御方。
でも引き合わせられた僕にいろいろとグチャグチャにされては最終的に信奉者、というか狂信者…?的なモノとなる。
そして今回、僕から「こんなヤツ知ってる?」と出された特徴に心が吐血した。
…覚えたんだァ(白目)。

僕:
シルバーバレット。
幼き日は塩対応を通り越して周りに興味がなかった。
けど幼き日の自分に飽きもせず突っかかってきていたヤツがいたことは微かに記憶がある。
そのふとした記憶を親友であるマス太に話したところ横になられたのでオロオロ。
マス太…?いきなりどうしたの…?
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