さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どっこいどっこい。



或る家の話

『白峰透』という少年と青年の間にいる男を初めて見たとき、俺が思ったのは「コイツ大丈夫かな」という気持ちだった。

技能面は何も申し分ない。

肉体面の方だって同じ。

だが、どうにも。

他人から頼まれたことや言われたことを苦笑しながら、ホイホイと安請負してしまう、そんな自我がない性質に不安を覚えてしまったのだ。

 

俺が透の世話を見たのはこの世界に入ってからこの厩舎を開業するまでの師匠の倅だったからだ。

……"馬狂いの白峰"

そう呼ばれて久しい一族に列なる小僧。

空恐ろしいまでに馬を愛し、馬に愛されていた男の息子。

その血を色濃く受け継いだ子供。

それが白峰透(小僧)だ。

だから俺は小僧の面倒を見たし、小僧にも良くしてやった。

そして、彼が独り立ちできるまでの少しの面倒見たら後は放置でいいと思っていた。

実際、俺がいなくても彼はやっていけるだけの技量があった。

 

がしかし。

話の冒頭で述べた"不安"があったろう?

そうそう、小僧には自我がないというヤツだ。

俺はずっと、小僧の控え目な微笑みを見た日からずっと、そう思っていた。

…あの日までは。

 

───この馬は、僕のモノです。

 

ゾッとするような、眼がそこにあった。

1000人中1000人が走らないというような華奢でぼんやりとした馬に執着する姿。

それは奇しくも彼の父が、自分の見出した馬しか引き取らず、またそのような行為ばかり行っているので細々とした経営のはずなのに、見出した馬のことごとくが()()()()()という最早魔法と呼ぶには相応しくないような()()()()()を起こしていたことに、よく似ていた。

 

 

その"白峰"と名乗る男の家は馬に関わる仕事を選んだ者がことさらに多いという家系だが、その実、殿様とかの、偉い人の馬を世話していたとかそういう家ではないらしい。

元はどこか雪の降る土地の、ある一介の農民が開祖で、住んでいた土地の業突く張りの地主に可愛がっていた馬を無理矢理奪い去られた結果、うんぬんかんぬん…というのがハジマリとのこと。

 

などの因果か。

気づけば"白峰"の家の者は馬という生物に惹かれるようになった。

それも、ただ単に馬が好きなのではなく、自分が見出した馬に異常なまでの執着じみた『愛』を注ぎ、かつそれを相手である馬からも返されるような関係を築くことが当たり前になり。

時代が時代なら異類婚姻譚でもしてたんじゃなかろうかというほどに()()な人間がポンポコと生まれてしまう家に。

まあ、それはともかくとして。

 

「惜しかったなァ……"ホワイトキティ"

 

白峰透の父である、その馬狂いが心底惜しそうに零した名は。

 

…嗚呼、何と。

合縁奇縁と、いうものでしょう!





白峰家:
意外と狂人(くるんちゅ)振りは【白の一族】とどっこいどっこいな血筋。
伊達に"馬狂いの白峰"とは言われていない。
なお家の始まりの話を聞くに…あれ?どっかで…?
またそんな開祖の因果からか、白峰の家に列なる者のほとんどが自分の『運命』を見つけては相思相愛になるらしい。
たぶんヒトミミよりも馬のことを愛している人たちのお家。
なので嫁や婿はその"馬狂い"に理解のある親戚から基本取っている模様。もしかして:カモフラージュ。
まぁ、人間が『普通』に生きていくには、『普通』にならなくちゃいけないからね。
だから愛する相手()は他にいるけど、しゃあなしで…みたいなヒトミミ関係。

時代が時代なら、ぜって〜異類婚姻譚してただろうイカレたヤツらェ。

…という家なので、対銀弾の透おじさんも白峰家の人間たちにとってはそう珍しいモノでもなかったり。
逆に『運命』を見つけられてよかったね!している。
そのため白峰家は今日も今日とて相思相愛だし純愛なんだ…。
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