「「コイツが悪い」」
「…は、?」
「言っただろ──辞める、って」
その日、シルバマスタピースが告げられたのは自他ともに認める大親友が競走バを引退する、ということで。
こちらの混乱を知りもせず大親友-シルバーバレットは淡々と話を続けていく。
「…前もあんな骨折したからなぁ。大事にならない内に引退した方がみんなにも迷惑かけなッ゛!?」
だが最後まで言い切ることなく、その華奢な身体が椅子から消える。
頭に血が上る。
見つめた先にいる
…あぁ、そう言えば僕らって。
喧嘩らしい喧嘩を、したことがなかったね。
「ざッけんなよボケが」
もう一発、鳩尾にぶち込もうとすればやっと僕が本気だと分かったらしい。
慌てて両手を上げて降参の意を示してくる。
「待て待て待て!悪かった!僕が悪かった!」
「悪いなんて何一つ思ってねぇだろうが!!」
「思ってるよ!!僕はもう走れねェんだぞ!!!」
「それがどうしたァ!!!!」
「はァ?!」
もう一発、重いのが入る。
吹っ飛びこそしないが、確かに後ずさる。
「テメェがこんなにサクッと諦めるワケ、ねェだろうが…!」
「───ッな、」
「図星か?」
「うるせェ!!」
「っぐ、」
視界を潰すように反撃。
…まァ、そうなるっちゃそうなるかな?
シルバーバレットは体格が小さいから。
だから真っ先に相手の視界を潰してから一転攻勢、といった感じか。
「お前だって知ってンだろォが!!この年齢で第一線走ってるヤツなんざ居ねぇって!」
「…………」
「なら戻る意味なんかあるのかよ!!!」
叫ぶ。
喉を痛めることなど一切気にせずに叫び続ける。
だけど、それでも。
「……お前自身が一番戻りたがってるクセによく言う」
「………………は?」
「本当はもっと走りたいクセしてよく言うぜ。ホント」
「いや、何を言ってんだよ……。僕は別にそんなこと思わねェし」
「じゃあなンでそんな眼ェしてんだよ!」
感情を必死に抑えつける眼。
今すぐにでも泣き出してしまいそうなほど潤んでいる瞳。
それに気付かれたくないのか、シルバーバレットは必死に顔を背けるけど。
残念なことにこちとら伊達に大親友やってませんから。
バレてるんですよ、全部。
だからこそ、僕はこう告げるしかないのだ。
「俺は、まだお前の走りを見たい!!」
「~~~~~ッ!!!」
「頼むから……戻ってきてくれ……」
懇願する。
それは紛れもなく僕の本心だった。
「バレットいる?…ってウワーッ!?」
「「アッ」」
親友組:
シルバーバレット&シルバマスタピース。
互いに鼻血出て顔に青アザとかできる程度には大喧嘩した。
マス太は体格にモノ言わせたゴリ押しだけど華奢な銀弾は視界潰してからタコ殴りにするタイプだったり。
なお後日ふたり揃ってボロボロなのを周囲に見られては『僕とバレットは殴り合えるくらいの仲でしたよ。あなたは?』って無言の煽り顔するマス太ェ…。