さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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見るものがあるのならずっとそっちを見ていたらいいのに。
中途半端にこちらにも目を向けるものだから。



あなたのことが、好きな私と

好きの反対が無関心というのなら、残酷すぎると思った。

見ているものがあるというのならそれだけを見ていればいいのに。

ふとした時にこちらを見てはありふれた会話をしてくるのに心が軋む。

期待なんてさせるなと、何度叫んだことだろう。

 

「…………」

 

それでも今日も私はこの部屋に足を運ぶのだ。

扉を開く前に深呼吸をして気持ちを整える。

大丈夫だと言い聞かせてドアノブに手をかける。

 

「おはようございます!」

 

いつも通りの挨拶と共に部屋に入る。

するとそこにはベッドから身を起こしているウマがいた。

 

「…よォ、」

 

年頃の娘さんが気軽に訪れていい部屋じゃねンだけど、なんてボヤきながらも、せかせかともてなしの準備をする姿は手馴れていて。

そんなあなたを、私は。

 

「……何かあったのか?」

 

私の顔を見るなりあなたはそう言った。

相変わらず鋭い人だと感心すると同時に心配させてしまったことに申し訳なさを感じる。

 

「いえ!なんでもないですよ!!」

 

笑顔を作って誤魔化すように振る舞うもあなたはやさしいから。

「相談ぐらいなら乗れらァ」と私のことを気遣ってくれる。

それが嬉しくもあり、同時に苦しくもあった。

あなたがやさしさを与えるのが自分だけならいいのに、と思うと胸の奥が痛くなる。

でもそれはあなたがあなたである限り、未来永劫無理なことで。

 

「本当に何でもないですから気にしないで」

 

しりすぼみの返答に少し怪訝そうにしながらも「じゃあ甘いもんでも食べるか」と取り出される甘いもの。

手作りだというソレは試作品だという。

 

「改善点があれば教えてくれると嬉しい。…そういやアンタ、アイツと同じで甘過ぎないのが好きだったよな?」

 

手作りにしては店の売り物のような菓子がひとり分に切り分けられる。

それを皿に乗せて差し出してきたあなたを前にして、遂に思い知った。

 

「どうした?気分じゃない、か?」

 

黙ったまま俯いている私を心配したらしいあなたの声音には不安の色があった。

ああ違うんです、そうじゃないんですよ。

ただ私が弱いだけで。

 

あなたがこちらに関心を向けないことを、はじめから分かっていたはずなのに。

それなのに今更になって傷つく自分が嫌になっただけだ。

あなたの優しさに触れれば触れるほどに辛くて仕方がない。

だからもうこれ以上は耐えられないんだ。

 

「……あのっ!!!」

 

意を決して顔を上げると目の前にあるあなたの姿。

それにひどく安心している自分に自分で嗤う。

 

「な、んでもないです」

 

罵る言葉さえ、吐けやしない。

そうして『哀れだ』と、眦から雫が落ちた。





私のことを、何とも思っていないあなた。

部屋の主:
気づかない癖に期待させるウッマ。
たぶんそういうところは血筋だし、自分の部屋に訪れる人々が()()訪れるのか?をよく考えようともしない。
考えたとしても『俺に相談事があるらしい』程度。
それはそれとして"アイツ"と呼称する可愛がっている後輩がいるらしい。
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