さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どうか、そのままで。



気づかないあなた

相変わらず人気な人だなぁ、と思う。

周りももう仕方のないこと、と受け入れられている現状は見る人から見れば不誠実だと言われても仕方ないんじゃないかと。

 

自分の横を通り過ぎていった愛らしいウマ娘を横目に見ながら慣れ親しんだ扉を開ける。

 

「なんだ?珍しいな、お前がわざわざ来るなんて」

 

中では部屋の主である先輩が皿に乗った菓子を片そうとしているところで。

「よかったら食うか?」とひとり分が切り分けられている皿を寄越されたのにこくりと頷く。

 

「どうだ?甘さ控え目にしてみたんだが」

「おいひーれふ」

「そうかそうか」

 

先輩は。

歳下の世話を焼くのが好きで。

あと、いっぱい食べる人も好き。

けれど自分に対して向けられた感情に疎くて、それでいてやさしいから周りを勘違いさせる。

でもそれは僕にとって好都合でしかないわけで。

 

「あの、先輩」

「ん?あぁ……そうだな、そろそろか?」

 

僕の言葉に先輩は少し考えるような素振りを見せて。

それからいつものようにやわらかく微笑んでくれる。

 

「すぐ作るから、待ってろ」

 

そうして頭を撫でてキッチンに消えていく。

あの人のことだから僕がご飯をたかりに来たぐらいにしか思っていないのだろう。

元から作り置きを取りに行くと約束していたのもあるけれど。

 

「ね、先輩」

「どぅわっ!?」

「きょーのご飯はなんですか?」

「いま火ィ使ってるから」

「ねーえ?」

「はいはい…肉だよ肉。生姜焼き」

「やった」

 

あたまひとつ分低い、芦毛になり始めた鹿毛に顎を乗せる。

 

「重いんだけど……」

「じゃあ早く作っちゃってくださいよ」

「……離れろ」

「嫌です」

 

ぎゅうっと腕に力を入れると諦めたようにため息を吐かれる。

こうやってふたりきりになると甘えたくなるのだから不思議だ。

 

「…ホントに、調子悪いみたいだな」

「え?」

「だってお前、いつもならこんなに近づいてきたりしねーじゃん」

 

肉、お前の分ちょっと増やしてやるから機嫌治せよ…なんて。

ポンポン頭を撫でられるのに目を細める。

こういうところがあるからずるいなぁと毎度思うのだ。

 

「……ご飯もいっぱい欲しいです」

「はいはい」

 

やさしい人。

あなたにどれほどの人が狂わされているのか知らないまま。

ただただ無防備に笑っている。

そんなところが、

 

(僕が、守ってあげないと…)

「ほい」

「はい?…あふっ!?」

「特別サービスで味見させてやらァ」

「~ッ!!」

「美味いだろ?」

「……はい」

「よし!じゃあできたら呼ぶからリビング戻っとけ」

「わかりました」

 

……まあ、結局今日もこうなるんだけど。





後輩:
大概重い。
先輩を罪な人だなぁ…と思いつつも止めるつもりはない。
だって先輩はそういう人ですから(にっこり)。
実は無条件で先輩の家に入れてもらえる人間だったりする(それ以外はみんな事前連絡必要)。
そして先輩の前では当バ比で後輩ムーブをしている。
先輩に可愛がってもらうことに余念がないんだナ…。
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