そーゆーはじまり、そして出会い。
その牝バは物心ついた時から『忌み子』だと言われ、放っておかれていた。
そこに在るだけで不幸を呼ぶ存在だと、疎まれてはひっそりとひとりぼっちでいた。
それでも牝バは寂しくなかった。
そう思う、余裕がなかった。
何故なら生まれながらにして牝バには普通とは違うモノが視えていて、その視えるモノが次から次へと枝分かれして、続いたり終わったりするのを毎日眺めているうちに、いつしかそれが当たり前になっていたからだ。
そんな日々の中、ある日彼女は声をかけられた。
「こんにちは」
と。
それはとても優しい声だった。
牝バはその日初めて自分に笑いかけてくれる『誰か』を見た。
明るい毛色のその牡バはひとりきりでいた牝バを心配して、声をかけてきたらしい。
自分と同年代の幼いウマがひとりきりでこんな場所にいるのは危ないだろうと家まで送ってくれようとするのに牝バはふるりと首を横に振った。
「あなたと、いっしょがいい」
話すな、とそれまで戒められていた唇から出た声はひどく掠れて。
それでもちゃんと届いたようで。
「聞いてみなくちゃ、分からないけど…」と少し困った顔をしたけれど、「じゃあ一緒に行こうか」とその牡バは言ってくれた。
そしてふたりは手を繋いで歩き出し。
同じ家で
牝バの元々の所有者だった家は『忌み子』である牝バを引き取ってくれるなら万々歳と喜んでいて、家の者も事情を聞いて「それならば仕方ないね」と言ってくれて。
しかし、どうして自分みたいなのがこんなに良い環境にいるのだろう、とこれまでの生活と今の生活を比べて、いわゆるギャップに恐ろしくなった牝バはある日逃げ出し。
『もうこれ以上幸せになりたくない!』と、捨てられる前に自分から捨てようとしたのだ。
だが。
「よかった、よかった…!」
真っ暗な夜の中で自分を探し出した彼ら彼女らが泥まみれに汚れた牝バを迷うことなく抱き締める。
それに驚いて思わず泣き出してしまったら、更に強く抱き締められた。
自分は、あなたたちのところにいて、いいのか。
身振り手振りでそう伝えれば泣き声混じりに居ていいと、居てくれと。
それを聞いて、やっと。
牝バは。
「いる、いる…。わたし、あなたたちと、いっしょにいる…!」
*
普段、きちんと言うことを聞いて家の傍で遊んでいるはずの牡バが連れて帰ってきた牝バに家の者はひと目見て驚いた。
それはその牝バがあまりにもひどい扱いを受けていたと分かる容貌だったからだ。
ろくにご飯も食べさせてもらってないのだろう痩せた体に虚ろな眼。
きゅ、と控えめに牡バの手を握る華奢な手に『この子を引き取ろう』とまず言ったのはその家の末子である男児だった。
「よし、今日からキミはこの家の子だよ。よろしくね、───」
牝バ:
実は元は引き取られてきた子だった。
生まれながらにして持ち得ていた異能のために『忌み子』と言われ、ろくに世話をされていなかった過去を持つ。
その中ではじめて自分に話しかけてくれた牡バに惹かれ連れて帰ってもらうことでお家入り。
でも今まで受けたことのない愛や優しさを家のみんなから与えられては恐ろしくなり捨てられる前に自分から捨てようと思ったことも。
けどちゃんと幸せになることを受け入れ、幸せになろうとしたところ…ハイ。