さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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白峰おじさんは粘着系男子だから絶対やるよ、こういうこと。



いつか、届けと

キミへ向けての手紙を書いた。

報告書は書きなれているけど、こういうのは書きなれていないから一通目はひどく不格好で。

 

短くとも、便箋一枚は手紙を書いて。

毎日毎日飽きもせず、キミへ手紙を送り続けた。

時が経つにつれ、便箋もペンも高価になった。

キミに渡すものなのだから、道具が安価なものではいけないだろうと。

 

1年目は訥々だった。

何を書くべきかと線が迷いに迷っていたし、何枚も便箋がゴミ箱に落ちた。

2年目は少し慣れた。

3年目からは手馴れたものだ。

 

「……ふぅ」

 

今日の1枚を書き終えて、僕は大きく息を吐く。

そして封筒に入れて封をする。

キミへの手紙。

他の誰かに見せるなんてとんでもない!

…まぁそれ以外にも赤裸々に赤裸々が過ぎるというのもあるのだけど。

 

手紙を書きながら、トレーナー業もちゃんとしている。

これでも僕はベテランだからね、そこそこ頼られたりもするわけだ。

頼られて想いを寄せられたりもするわけだ。

けれど、僕はキミがいちばん綺麗だと思っているから何にもときめかないんだよね、申し訳ないことに。

 

そうして、ちょっと事故に遭って入院した。

子どもを助けた末だったけど、トレーナー業を続けるには問題がない怪我で。

大丈夫だって言ってるのに、「今まで働き詰めだったから」と有無を言わせずの入院。

それに気づいてみたら自分の名前と職業とキミのことぐらいしか覚えてないし。

まぁそりゃあ入院だわな、と考えながら今日もキミへ手紙を綴る。

今まで健康優良児だったから病院の生活は新鮮だ、と書きながらもふと思った。

 

───どうして、キミは手紙を返してくれないのだろう?

 

律儀なキミのことだから、こういうことをしたら同じようにしてくれるはずなのに。

いや、そもそもなんで僕は毎日こうして手紙を書き続けている?

…分からないけど、習慣づいた手が勝手に動くのに従った。

 

書いた手紙はお見舞いに来てくれたみんなに手渡した。

キミに渡しておいて、と。

それと中身を見ないでね、と。

すると皆一様に何とも言えない顔をして。

 

「……ねぇ、どうして?」

 

僕の問いかけに、誰も答えない。

ただただ、困ったように微笑むだけ。

その表情の意味が分からなくて、また不安になる。

一体どうしたというのか。

…そんな日々を過ごして、遂に記憶が戻る。

記憶が、戻って。

 

「あ」

「あ、あ」

「ああああああああぁぁぁ…!!」

 

思い出す、思い出す。

全部、全部!!

 

「…そりゃあ、返して、くれないよねぇ」

 

キミへの想いを綴った手紙を送り続けて幾星霜。

返事はまだ来ない。

返事はまだ、来ない。





トレーナー:
白峰さん(ウマ軸史実‪√‬の世界のすがた)。
キミへの手紙を書き続けている。
365日、飽きもせず。
キミの声も、顔も、匂いも色褪せていくけれど。
それでも。

なおその"愛"の手紙を垣間見た不届き者には失語症.放心状態.健忘症.幻想・幻覚かのいずれかをプレゼントです☆
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