さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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巻き込まれる銀弾。



見たかったのは?

フラリと散歩していると道に迷っているウマを見つけた。

鮮やかな栗毛をしたそのウマに声を掛けてみれば何とビックリ!

きょうだいの友人に瓜二つなのである。

世界には3人自分とよく似た相手がいるというのは有名な話ではあるが、まさかこんなところで出会えるとは思ってもみなかった。

 

「…あの〜」

 

というワケで。

行先はどこですか?と問うと、僕としてはよく知っている場所を指定されて。

それならこっちですと案内することとなった。

そうして辿り着いた先は、

 

「やっほ〜、サンデー」

「お〜、何だお前が平日に来るなんて珍し…!?」

 

マブダチの家。

じゃあここまで案内したので帰りますね、と踵を返そうとすれば「待て待て待て!」と友人に引き止められ。

 

「えっと……そちらの方は?」

「俺の現役時代のライバル」

「へぇ……」

 

一緒にいてくれ、と居間に通されたと思ったら、まるで審判のようにふたりの間に座るように配置されて。

そこでどうすればいいんだろうと苦笑する。

そんなこんなで、ふたりの話が始まった。

 

 

「…何しに来たんだ、お前」

「息子…グローリーゴアからキミと会ったと聞いてね」

 

何年ぶりだろうか。

最後に会ったのもいつか思い出せないほどに、サンデーサイレンスは目の前のウマのことを今の今まで思考の奥底へと沈めていた。

 

…あのころのサンデーサイレンスは、目の前のウマの、何もかもが気に食わなかった。

朗らかな笑みを絶やさず、周りから期待されて、みんなに愛されて。

物語のヒーローもかくや、というようにスポットライトしかない道を歩む…そんな目の前のウマが。

気に食わなくて、気に食わなくて、仕方なかった。

 

だから。

少しでも胸のつかえを取ろうと。

目の前のウマの、その美しい顏が歪む顔を見れれば、多少は楽になるかと。

そう思ったのだ。

……思ったのに。

 

『やっぱり…キミは凄いよ、サンデー』

 

渡されたのは賞賛だった。

サンデーサイレンスが欲したものではなく。

ただの、ありきたりな。

悔しさなんてないというような、ただ純粋な称賛の言葉であった。

そうして。

 

『…お前のことなんか、大ッ嫌いだ』

 

サンデーサイレンスはその想い出を、思考の深くへと沈め落とした。

 

 

ギラギラと、鮮やかに煌めく目に誘蛾灯のように惹かれ。

生まれてはじめて自分に向けられた汚いスラングすらも心地よく思ってしまうほどに、そのウマは目の前の存在に夢中になっていた。

そして同時に、理解してしまった。

自分が目の前の存在に憧れていることを。

自分もまた、こうありたいと願っているということを。

だからこそ。

 

(僕は、負けるわけにはいかないんだ!)

 

憧れの存在を前にして、無様な姿を晒すことなぞできなくて。

だから。

 

『ねぇ、サン…』

 

頑張ったから。

褒めて欲しかった。

他でもないサンデーサイレンスに。

「やりやがったな」とか、「次は負けないぞ」とかで、よかった。

ぶっきらぼうでもよかったから…言葉が欲しかった、のに。

 

『…』

 

虚しく横を通り過ぎていった小柄な背に呆然とする。

 

『なんで…?』

 

僕は、キミに、キミだけに…。

 

『見てもらいたかった、だけなのに…』

 

どうして?は問えぬまま。

そのまま何年も費やして。

 

「こんな田舎くんだりまで来るなんて…暇なヤツだな、お前」

 

やっと…。





父親組:
お互いにすれ違ってはぐちゃぐちゃしている。
主人公感マシマシの仮面をひっぺがして、その内面を見たかったSSとそんなSSに自分を見て欲しかったライバルさん。
ふたり揃って淡白そうに見えて湿度がヤバい。のに、互いに互いで「こんな感情を抱いているのは自分だけなんだろうなぁ」と思っているので…。…うん。
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