さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ホラー回。
たすけて"お友だち"!



那由多分の一、ぐらいの確率でありそうな話

まずは簡潔に話を始めよう。

『負けた』。

あぁ、完膚なきまでにの負けだとも。

えげつないくらいの出遅れをカマして何とかいつもの位置を取ろうとしたがバ群をこじ開けるほどの力もなくて失速。

重賞でもないオープン戦に出て、この体たらくなのだから笑うものも笑えない。

逆に勝ったコが明日世界が滅亡するんじゃなかろうかと考えてそうな絶望顔になっていたのに申し訳なくなったくらいだ。

そして昨日の今日。

いつもなら軽いストレッチをしてトレーニングに入るのだが、その日は違った。

 

「え、あ、みんな…?」

 

周りの、様子がおかしい。

僕を見る、目が。

まるで精巧な"ニセモノ"が現れた時、みたいな、目を…。

 

「み、んな…?」

 

僕の声には誰も反応しない。

ただ僕の方をじっと見ているだけ。

そうこうしているうちにトレーナーである先生が現れて僕を連れて行く。

 

「え、あの……」

 

困惑しながら僕は手を引かれるままについていく。

何だ?どうしてこんなことに?

そんな疑問を胸に抱きながら。

向かった先はトレーナー室だった。

僕と彼がよくミーティングをしている部屋で、今は無人だ。

ソファに座らされると先生に見下ろされるような形となり、

 

「…キミは、誰だ?」

 

え、と声すら出せない。

向けられる目の、あまりにもな冷たさに。

彼の手が伸びて、胸元を掴むのにも抵抗ひとつできない。

 

「キミは……僕が育てたウマじゃない」

「え?」

「誰なんだ……お前は!」

 

彼は怒っていた。

いや違う。

これは悲しみ、だろう。

だって、あんなにも優しい人だから。

あんなにも優しくしてくれる人が、僕に怒りを向けるはずがないんだ。

そう思った瞬間、涙が出てきた。

なんで?どうして?

そんな言葉ばかりが頭を支配する。

だが。

混乱でぐちゃぐちゃになる思考でも、勝手に脚が動いて。

 

「どこ、ここ…?」

 

気づけば見知らぬ教室-埃っぽさと積み上げられたものを見るに倉庫か何かに使われているのだろうか-に辿り着いた。

もう、何も分からない。

みんなしてなんだよ、()()()1回負けただけじゃないか!

 

「っ!?」

 

なんて。

思った瞬間、不意に下がる室内の温度に突如として現れた気配。

気配のする方にバッと顔を向ければ、そこには黒い影で形作られたウマがいて。

 

「だ、れ?」

 

影は答えない。

答えないままに僕の手にシンプルな"目覚まし時計"を握らせる。

 

【ハヤクカエレ、…バカ】

 

 

夢を見た。

何とも、悪夢らしい夢だった。

がしかし。

今はそんなことを考えている余裕はない。

何故なら今日はオープン戦ながらもレース当日なのだから。

 

「さて、…()()()出遅れないように気をつけよ〜っと」





(銀弾にとっての)ホラー回。
銀弾がもし敗北したら激重感情勢は解釈違いするやろなって。
自分が銀弾を負かす!と思っていても、いざ銀弾が負けたら「誰だお前」ぐらいはジャブみたくするだろうな、と。
気付かぬ内に理想を押し付けられてる銀弾、…かわいそかわいいネ!
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