さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ノベライズ外伝『"Destiny" to run away.』特装版付録風の小話。



夕闇には、まだ遠く

昔から、誰とも知れぬ声を聞いていた。

姿はない。

だが高くもなくば低くもない、そんな心地の良い声で話しかけてくる声にはじめは怖がっていたが時が経つにつれ慣れていき、今ではその声と会話するのが好きだった。

 

───今日も元気そうだね。

「うん」

 

朗々と、流れゆく。

訥々と喋る僕の話にも「うん、うん」とやさしく相槌を打っては「今日も頑張ったんだね」とか、「それは大変だっただろう?」なんて労いの言葉をかけてくれる。

それが嬉しかった。

だから僕は毎日のように、ひとりになるとこの不思議な声の主と話していたのだけれど…。

 

───キミは、『(クズ)』で終わるのかな?

 

もうダメだ、と。

ここまでやったから、頑張ったからいいよね…と諦めかけたその時。

真っ暗闇の世界で、眼が遭った"ソレ"。

くつくつ、クスクスと笑いながら僕を見つめている"ナニカ"がいた。

怖いはずなのに、逃げたいはずなのに……不思議とその瞳からは眼が離せなくて。

そして聞こえてきた言葉の意味を理解した瞬間に。

 

(───違う。)

 

踏み込んだ足が、もう一段階深く沈み。

そこから、跳ね上がるように。

爆発的な推進力を得た身体が一気に加速し、目の前にいたはずの化け物(赤い影)へと肉薄した。

 

───(クズ)』で、終わってたまるか!

 

それで。

気が付いたら、僕は地面に倒れていて。

全身を襲う疲労と共に視界いっぱいに広がるのは…。

 

「…大丈夫か」

「ヒッ、ひゃ、ひゃいッ!」

 

 

小さな黒い影。

凄まじい速度で、ピンボールのように、または加速するそういうギミックでも踏んだ時のように物狂いで駆け抜けていく姿を見る。

その動きには物狂いながらもムダがなく、洗練された美しさすら感じさせるものだった。

しかし、それと同時に危うさも同時に感じて。

あの動きではいずれ必ず限界が来るはずだ。

 

そう思って。

いつも通りに、抜いて。

…抜いた、はずで。

───ぞわり。

 

【SCRAP/SCRAPPER!!】

 

爪が、伸びてくる。

思わず、餓えたケモノを連想するがごとく。

後ろから迫り来たソレは、まるで獲物を狙うかのような鋭い眼光が。

 

「……っ!!」

 

咄嵯の判断で()()()()として。

その()()()体の強ばり、コンマ何秒の刹那で。

ざわりと。

風が抜けていくのを、ただ呆然と見やっていた。

「……」

 

げほごほと下の方から苦しそうな声。

ぐったりと、地面に大の字になった()()から、聞こえてくる音。

それに手を差し出せばキョトンとした顔ながらもしっかと握り返されて。

 

そうしてこの日、ふたりの『運命』は───。





登場人物:
察せられる人には察せられる御方たち。
見た目の描写はチラホラあるが明確な氏名の登場はなく、また物語もふたりの出逢いであるとあるレースに()()焦点を当てた内容となっている。
でも推定モデルの史実仲からこの小話しか供給がないのに二次創作されてそう。
ほら、公式(史実)が最大手だから……。
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