さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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█は、才能ある者を手元に置きたがる。



りそうのばしょ

『夢』を見る、夢を見る。

 

 

夢の中の僕がいる場所は、まるで天国みたいな真っ青な空と地平線が見える青々とした草原で。

そこで子どものようにはしゃぎ、走っては息切れもせず、かといって走り過ぎて筋肉痛になりそう…ということもなく走り回る感覚に──僕は、これが夢の中だと自覚するのだ。

そうしてその夢の中で、いつも決まって同じ███と出会うのである。

 

『ずっと、いてもいいんだよ』

 

その███とは、夢を見るたびに話しているはずなのに。

その文面だけを覚えているだけで、姿も、声音も…覚えることができないまま。

『キミがいたければ、ずっとここにいればいい』とやさしく、何の思惑もないとでも言うように微笑む███を前にすると……。

胸がどうしようもなく締め付けられてしまうほど苦しくなってしまって……。

……目が覚めると、目尻から涙が流れていて。

「また"あの夢"を見たの?」と心配してくれる家族に、「大丈夫だよ」と言って笑ってみせるのだが、

 

「、」

 

きっと。

███の言うことに従えば、ずっとずっと、『幸せ』でいられるのだろう。

"ずっと走り続けられる"という『幸せ』。

"自分がどこまで速くなれるのか"という好奇心を満たせるという『幸せ』。

脚のことを、何も考えずに走れるというのはそれだけで『幸せ』で。

気分が良くて、なのに。

 

『ずっと、ここにいてもいいんだよ』

 

そう、そういったニュアンスの台詞を███から告げられるたびに無防備な背中に氷を入れられたかのような悪寒に襲われて。

恐ろしくなって、息すら忘れて。

 

「…はっ、」

 

そんなふうにして、また一日が始まる。

が、うつらうつらと舟をこぎ、ふわっと意識が浮上して目を開ければ、また同じ。

視界いっぱいに広がる、

 

『おいで、おいで』

『ずっと、ずっと、いっしょにいよう?』

『ここにいて、ずっと』

 

███が、僕に言う。

そういえば、何となく、ずっと…断り続けているような。

いや、答える前に()()()()()()から。

だから答えていないだけなのだけれど。

それでも、…███がしびれを()()()()()()()()と、解る。

 

『ねぇ、こっちにおいで』

『だってここは楽しいところ!』

 

もう何度も見たはずの景色の中、初めて見る表情をした███の顔を見て。

あぁ、やっぱりそうなんだな……と思った。

 

「ごめんね」

 

どうして謝ったのか、わからないけど。

そうしなくちゃ、いけない気がして。

ちゃんと、()()()()()って。

いつもならそれとなく言葉を濁すのに、何故か。

 

「ごめん。…僕、そっちには、」





ずっと、ずっとここにいればいいよ。
キミのために、用意したんだよ。
老いも病も悩みもないように。
だから。
ずっとずっとずーっと…。

『ねぇ、走って?』

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