さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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わすれたくないから、くりかえすの。



ひとりぼっちの、ルーティーン

知ったふうな言葉の歌でしんみりして。

ありがちな映画を見て。

挨拶はちゃんとするとか、今日あったことを話すとか、食べ終わったあとの食器はちゃんと水につけるとか。

そんな約束を。

 

『幸せは目に見えない』って。

よくできた言葉だね。

下品ではないながらも、きらめく光が眩しくてシパシパと瞬きする。

腑抜けたカッコで、通い慣れたコンビニで煙草を買って。

それから家に帰って眠りにつく。

眠れなければ外に出て。

夜風に当たって、体力を消費して。

いつになったら慣れる?

変わらないルーティン。

…キミがいないだけの。

 

明日は何とかのゴミの日だからまとめて。

薬はあと一シートになったら買いに行く。

染み付いちゃったクセ。

繰り返さないと、繰り返さないと。

 

毎日、毎週、毎月、毎年同じルーティン刻んで。

行事ごとがある日はそれに因んで。

出来合わせで、有り合わせだけどそれっぽく。

味気もない食べ物食んで、飲み込み難いそれを茶で押し流す。

そうやってみんな生きてくんだろ?

それが"当たり前"だって言ってさぁ。

 

「…………もういいよ」

 

何度目だろう。

その言葉を呟くのは。

繰り返しても繰り返すだけ虚しくなるだけだからやめようと思っても、また気がつけば口にしてしまう。

何もかもどうでも良くなって、ただ息をして眠るだけの日々を過ごしているうちに季節は巡っていく。

冬を越えて春になって夏になる頃には、また世界は変わっている。

キミに囚われた僕を置いて。

変わらない、キミをおいて。

 

匂いも声も感触も、もう全部覚束ない。

立てかけてある写真だって、そういうシロモノみたいで。

忘れたくない温度を、キミが好きだった毛布にくるまって。

 

ご飯、炊けるようになったよ。

お風呂、沸かせるようになったよ。

自転車だって、乗れるようになったし、洗濯機だって使えるようになった。

洗濯物の畳み方も覚えたんだよ。

料理教室にも通ってみたけど、やっぱり僕は不器用で。

包丁の扱い方は多少上手くなったと思うんだけど。

あの頃よりもずっと上手くなったはずなのに。

あの頃よりもずっと美味しいもの作れるようになったはずなのに。

それを、伝えたい人はどこにもいなくて。

一番に、伝えたい人はどこにもいなくて。

 

36℃あまりの体温も薄れていく。

煙草吸って、面白みもない映画を見て。

酒を飲んでも酔えないから。

眠ってみても目が冴えるから。

あの頃みたいに、「悪いことしよう」って財布を握ってアイスを買いに。

 

人なんてほぼいない町を歩く。

視界が徐々にボヤけていく。

頬を、降ってもいない雨が伝って。

どうしようもなく、キミの温かさが。

 

()しい、なぁ…」





円グラフとか、そういうのを考えてみると大部分を構成していたモノがいきなり立ち消えってなるとどうしたらいいのか、きっと分からなくなるだろうなぁ、って。
何とか埋めようとしても残ったソレは空いたソコを埋めるほど大きくなくて、それでも残った小さな割合で何とか埋めようとして。
そこから割合を増やすために少しばかり学んで、体積を増やしてみたりするけど、元の大部分の、その代わりにはなれないよねって。

そんな話、でした。
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