あなたにむけて。
こころをこめて。
シャキンシャキン。
ちくちく。
そんな音を聞きながら、ぬいぐるみの自我は芽生えた。
「ね、コレでいいと思う?…"可愛いからいいと思う"って、なんか適当だなぁ」
見えていた、ワケではないが何となく分かった世界は色とりどりの布と糸に綿に裁縫道具で彩られていて。
自分の体を縫う手に、少しばかりの絆創膏があるのをぬいぐるみは感じた。
その手の主が自分を縫い上げている間にも、手の主たる彼女は楽しそうで。
針仕事をしながら鼻歌を歌い、時々独り言のように喋る声を聞いている内に……ぬいぐるみは自分がどんな存在なのかを理解した。
(ああ、自分は誰かへの贈り物なんだ)
そして、出来上がった暁には…ここよりずっと、遠い遠い場所へ、行かなければいけないことを。
「僕らの代わりに、キミには"あのヒト"を見守って欲しいんだ」
「…"あのヒト"は人として生きていくのに少しばかり向いてなくて」
「でも、…とっっっても、やさしい人だから」
───僕らのせいで、傷ついちゃったから。
ぬいぐるみに、主たる彼女と
ただ、主であるふたりが、その"あのヒト"をとても大切に思っていることは伝わってきました。
そのヒトの為に何かしたいと思っていることも。
……ただ、それがどういう形になるのかまでは分からなかったけれど。
「お願いだよ。僕たちの分まで、どうか……」
*
『み!』
そうして、出来上がったぬいぐるみは主ふたりの見送りをもって、お仕事をすることになりました。
これより先も、ずーっと。
寂しくないと言えば嘘ですけど、それでも大丈夫。
だって、ぬいぐるみはもう知っているのですから。
"あのヒト"はとてもやさしくて、あったかくて、素敵なヒトだと!
それに、ぬいぐるみがいないとどうやら"あのヒト"こと『おじさん』は生活していけないようなので。
…これは、仕方のないコトなのです。
『み~♪』
ぬいぐるみは今日も元気いっぱいに、『おじさん』のお世話をします。
まず起きると『おじさん』をぽてぽて叩いて起こして朝ごはんを作ります。
それから『おじさん』がご飯を美味しく食べているのをニコニコ眺めて、洗濯物を干したり掃除をしたり。
その間、『おじさん』は別の部屋で【ナニカ】を書いています。
たまに寝落ちしていることもあるようです。
昼になるとまた食事を作ってテレビを見たりとまったりした時間を過ごします。
夜になったら晩御飯を作って執筆に集中している『おじさん』の口にご飯を突っ込みます。
…まぁ、ご飯を突っ込む内にご飯をちゃんと味わいたい『おじさん』がキチンと自分で食べ始めるのですが。
『…み♪』
ぬいぐるみ:
或るふたりに作られた。
姿はふたりの内女の子の方を模して作られている。
或るふたり:
女性と男性。
女性の容姿=ぬいぐるみのデザインの元だったり。
ちな男性の方は小柄な四足歩行だとか…?