さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ふえました。



にているようで、ちがって。

『みー!!』

 

その日、ぬいぐるみの聞いたことがないくらいの大声で僕は目覚めた。

布団のそばに置いてある時計が示す時間はいつも起きる時間とそう変わらなく。

でも、どうしたどうしたと寝ぼけ眼を擦り視線を彷徨わせ、そして焦点が合う。

 

『み!み!』

『〜♪』

 

…そこにはいつものぬいぐるみと、そのぬいぐるみが抱き着く───小柄な馬を模した、どこか()()()()()()デザインのぬいぐるみ。

もしかして、知り合いなのだろうか?

そう思ってしまうほどに、涙の再会とでもいうかのような抱擁を交わす二体のぬいぐるみは、僕が起きたことに気がつくとすぐに離れ、僕の目の前でぺたりと座った。

 

「えっと……おはよう?」

『みぃ〜』

『ー』

 

二体ともそれぞれ頭を下げたあと、何かを言い淀むようにモジモジとする。

一体なんだろうと思っていると、意を決したかのように彼女(以下、人を模したぬいぐるみを'彼女'、馬の方のぬいぐるみを"彼"とする)が口を開いた。

 

『み、みみ』

「うん」

『みぃみぃ、みみ!』

『ー』

 

身振り手振りで。

何となく『これからよろしく』みたいなことを言っているんだろうな。

 

「……うん、よろしくね」

『『!!……!、!』』

 

 

その日から、'彼女'が"彼"に乗って移動しているのを見るようになった。

たしかに'彼女'の大きさからすると家の中を移動するのは骨が折れることだったろう。

それにしても、'彼女'には驚かされるばかりだ。

まず、料理ができる。

出会った当初に、時折面倒を見に来てくれる或る一家の人々がおすそ分けしてくれた野菜を使って、ちょっとした野菜炒めを作ったと思えば。

今では料理番組の内容を書き写したり、新聞をスクラップして、これらの食材を求む!と見えるところに出したりするのだ。

次に、掃除が得意。

家中隅々までピカピカにして、埃一つ残さないし、洗濯物だってシワひとつない仕上がりになる。

そして最後に、

 

『み!』

『ー!』

「はいはい」

 

布団の中に招き入れて、ゆるく抱き締める。

ふわふわとした触り心地と抱き心地が気持ちいい。

"彼"も一緒になってぎゅうっとさせてくれるものだから尚更だ。

スリスリと頬擦りしてくれるし、本当に可愛い子たちだと思う。

そんなこんなで過ごしている内に眠りに落ちて。

目が覚める頃にはもう朝になっているというのが日常になりつつある今日この頃である。

 

「…………」

『み?』

『ー?』

「んーん、なんでもないよ」

 

胡座の間に収まるようにして、自分の顔を見上げるぬいぐるみたちを柔く撫で。

それから少しだけやめようかと思うも「やめるの?」という素振りを見せられたものだから、今度はやさしく抱きしめた。

 

「…ずっと、一緒にいてね」

 





ぬいぐるみs:
なかよし。ふあふあでモチモチ。
人を模したぬいぐるみと四足歩行の動物を模したぬいぐるみ。
基本手のかからないとても良い子なのだが目を離すと動物を模した方に人を模した方が乗って家の中を駆け回るとか。
おじさんの癒し枠。抱き締めて眠ると、『悪夢』を見ないで済むらしい。

おじさん:
ぬいぐるみsに癒されている。
が、ぬいぐるみsに依存しているのも…また、たしかで。
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