その
「僕の走りで、役に立つのなら」
断られるかと思った頼みは、案外アッサリと了承された。
アグネスタキオンはウマ娘の身体とその限界に多大なる興味関心を抱く学徒である。
故に件のウマ娘-シルバーバレットに協力を要請することはそうおかしくないことと言えた。
学園指定のジャージに着替えた小柄な体がアグネスタキオンの指示に従いターフを駆けていく。
その速度は確かに速いが、それでも彼女の本来の速度には遠く及ばないだろう。
(ふむ……)
だがそれは当然だ。
彼女は既に第一線を退いて久しい。
ドリームトロフィーリーグに所属してはいれどトゥインクルシリーズに所属していた頃に比べると衰えている筈なのだから。
しかしそんなことは百も承知の上で、この小さな体躯に秘められた可能性を感じずにはいられなかった。
そして同時に、自分の研究欲を満たしてくれるであろう存在との出会いにアグネスタキオンは感謝した。
「ありがとうシルバーバレット君!君は実に素晴らしい!」
「どういたしまして。いずれデビューするだろうキミの役に立つのなら、先達冥利に尽きるよ」
天賦とも呼べるスピードとそれを支えるスタミナ。
体の使い方から足の着地の仕方さえ、すべてがただ
これこそが彼女が、生涯無敗でトゥインクルシリーズを去れた所以なのだろうと思わされる。
…とはいえ。
「どうかしたかい?」
「あ、あぁ…。いや、すまない。不躾な視線だった」
無意識に視線が下を向いていた様だ。
細い脚、枯れ枝のよう…とも見る人が見ればいいかねんほどの脚。
その脚に、アグネスタキオンは…。
「触るかい?」
「えっ!?」
唐突に差し出されたそれに思わず声を上げてしまう。
差し出した当人はといえば、いつも通りの涼しげな表情のままこちらを見つめていた。
「いや……でも……」
「構わないさ。ほら遠慮しないで、実物を触った方が何事も解りやすいだろう?」
恐る恐ると伸ばし、触れたソレは堅い。
足首を少し動かしただけですぐに骨に至る脚は鍛え抜かれたと表すには安売りが過ぎた。
───削り、落とされている。
1gのムダさえ許さぬと。
勝利という一点のみに全てを捧げて生きてきた者の末路がこれだと言わんばかりに。
「……ッ!!」
気づけば手を引っ込めていた。
いつの間にか息を止めていたことにも、そこで気づいた。
「もう良いの?もっとしっかり触ればいいのに」
「……いや、今日はここまでにしておくよ」
これ以上ここに居てはいけない気がした。
自分が今どんな顔をしているのかわからない以上、彼女に見せるわけにはいかないと思ったのだ。
「また後日頼むかもしれないが大丈夫かな?」
「勿論。いつでもどうぞ」
…紙一重、だった。
崩壊と最高速度のギリギリをとった、そんな、
「…たしかにアレは」
───"速度狂"、と。
「言わざるを得ない、か」
僕:
シルバーバレット。
速さのために
なので体つきは細いわ骨ばってるわな感じ。
でも。
──速く走れるからいいじゃない。…ね?