さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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言っても。
聞いて、くれないくせに。



その言葉を、

「ねぇ、キミはさ」

 

世間話のような気軽さで始まったその会話は、どうしようもなく過去の傷口を抉った。

 

「どうして、僕を『好き』になったの?」

 

ニコリと、ただ単純な興味本位で問うてくるかつての想い人。

ハッキリ言葉にしなければ、決して伝わらないくらいに鈍感なそのウマは、しかし絶対に想いに応えてはくれなかった。

そして、それを今も続けるだろうくせに、なお聞いてくるあたりが本当にタチが悪い。

 

「……そんなことを聞いて、どうするんだ」

「別に? ただ単純に知りたいだけだよ。キミが()()僕をどう思っているのか」

 

そう言って笑うウマの顔は憎らしい。…と、偽っては愛おしい。

自分の気持ちなどとうに見透かされているというのに、それでもまだ自分を見てくれる相手に愛憎入り交じって仕方がないのだ。

だが、だからこそ。

 

「…………」

「あーもうっ! ほらまた黙る!! それキミの悪い癖だぞ!!」

「うるさい……。大体お前も悪い……」

「えぇ〜!? なんで僕のせいになるのさぁ〜」

 

そうやって、いつまでも自分の隣にいるから。

……だから自分は、こんなにも苦しくて堪らないんだろう。

 

「だって、そうだろ? お前、俺のことどうとも思ってないのに」

 

友人以上には進めない関係。

友人が、最大の関係。

それ以上には絶対になれないし、なれるはずもない。

『誰か』を、選べばすべてが終わるのにそうなったらそうなったで絶対丸く収まらないとも分かる。

だから、自分たちの関係はずっとこのままなのだ。

それがきっと一番良い形なんだと信じて疑わないし、何より自分がそうしたいと思っている。そう()()()()()ならない。

なのに、目の前のコイツはそれを許してくれなくて。

 

「『好き』なら『好き』でイイんだぜ?周りの誰もがその感情を否定しようとも、向けられている僕はその感情を肯定しよう」

 

いつの間にか立ち上がっていたウマはこちらに手を差し伸べるようにしながら言う。

 

「キミが僕に向けているモノがどれだけものなのかは知らないけどね。でもそれは間違いなく確信できるよ。だって──」

 

そこで言葉を区切ると、美しき残酷は笑みを浮かべ。

 

 

傷つけないように、傷つけないようにやんわりと断って。

物分りのよい誰もがスッと身を引いた。

けれど。

 

「…」

 

自分を見つめる瞳が、掻き消えぬ熱を向ける。

まるで呪いのように絡みつく視線を感じながら、今日もまた笑顔を作る。

誰よりも微笑んでみせることが自分を守る武器だということを自覚しているからだ。

 

「…、変わんないねぇ……」





想い人:
たくさんの人から想いを寄せられてはのらりくらり。
クソニブだからと実力行使されようがさほど意味も影響もない御方。
自分に想いを向けてくれるのは嬉しいけど、その想いには応えられないよ。
だって僕にも、キミにも。

───『未来』ってヤツがあるだろう?
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