さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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台風の目の数だけ、ね?
それと、『おまじない』って漢字で書くと…?



おまじない

ふと、目があった。

瞬間、その目が自分を見たと(・)思(・)っ(・)た(・)。

おだやかに、少しだけ微笑んで。

私の心をさらっていった。

 

*

 

困ってしまう。困ってしまう。

「かえして」と言い募ろうにも、ひどいアナタは微笑んでばかり。

自分以外に微笑んでは、ジョウネツテキなリップサービスするの。

そんなに自分をいじめて楽しい?

そうやって、また、誰かの心を奪っていくんだね……。

 

*

 

お手紙を書きました。

たくさんたくさん、書きました。

アナタが喜んでくれるように、アナタのことをなんでも書いた。

アナタのことなら何でも知ってる、アナタにお似合いなのはアタシなの!

 

*

 

アナタをこっちに振り向かせたい。

わたしだけを見て欲しい。

だから"おまじない"したの。

図書館で、おまじないの本に挟まってたボロボロの紙に書かれていた"おまじない"!

いっぱい折り目がついて、手垢で変色してよく分からなかったけれど……。

 

*

 

アナタはどんな食べ物が好きなんだろう。

だってアナタはとっても少食だから。

いっぱい食べさせてあげたいんだ。

そうしたらアナタの笑顔が見れるから。

 

*

 

今日も練習場に行ったわ。

でも、いつもの場所にアナタはいなかった。

おかしい、と思って辺りを見回すと、奥の方にひっそり行って誰かと楽しげに話してたの。

 

…ねぇ、その他人(ヒト)はダレ?

 

どうしてそんなに親しそうなの……?

 

*

 

アナタのおうちに行ってみたの。

でも、誰もいないみたいだった。

窓辺にはレースカーテン越しに陽光が差し込んでいて、テーブルの上には読みかけらしい本が開いて置かれていたの。

まるでついさっきまでそこにいたみたいに見えたけど、アナタは此処にいないのね。

なんだか、不思議な感じだわ。

 

*

 

アナタって本当にキレイな顔立ちをしてますよね!

羨ましいくらい。

ねぇ、どうしたらそんなふうになれるんですか?

教えてください。

もっと近くで見せてください。

お願いします。

どうか、ワタシだけに微笑みかけてください。

 

・

・

・

 

アナタ、アナタ、アナタ…。

気が狂いそうなほどに想いを募らされているのは或る個人。

本人も知らず知らずのうちに思わせぶりな態度をしては他人を惹き付けてしまう、そんな個人。

それは乞い慕う者にとってはとても残酷なことでしょう。

ですが、当人はそれに気付くことなく、ただ無邪気に笑っています。

笑って、今日も誰かを"虜"にしています。

それは───嗚呼、なんて罪深い!

 

「あ、今日も手紙が入ってら」

 

「…部屋、こんなだったかな?」

 

「いや、なんか視線感じた気がして」

 

 

 

 

 

「…あれ?あの子、どうしたんだろ?」





誰か:
アナタに墜ちた人たち。
アナタに魅せられ過ぎて各々がいろいろとしている。
「アナタのことをこんなに想ってるのは自分だけ…」とは本人たちの談。

…知らぬが仏、だね。
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