さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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クソニブをオトすにはこれぐらい真っ正面切ってドカンとカマさないとダメなのかもしれない。(こなみかん)



駆けていけ、恋心

"アサビケシン"がその人に出会ったのはまだ幼いころだった。

父親に連れられて、父親の親しい友だというその人に、出会ったのだ。

 

「はじめまして、アサちゃん」

 

父の足を壁にして隠れる彼女と目を合わせるように、その人はしゃがみ込んで挨拶してくれた。

やさしい笑みだった。

どの同年代よりも気性が悪くて、自他ともに認めるガキ大将であった自分に対して、ひとりの『女性』だと認めて捧げられる笑みに。

 

「ぉ、わ、わたし…」

「うん」

 

アサビケシンが恋に落ちるのはそう時間のかからないことで…。

 

 

アサビケシンの初恋は年月を経るにつれて、ふいごを使うがごとく燃え上がっていった。

あの人のことが好きだと自覚してからというもの、あの人に会いたくて会いたくて仕方なくて。

あの人が笑うだけで幸せになり、あの人が悲しむだけで胸の奥を締め付けられるような痛みを覚えた。

そしていつしか、あの人に恋をしている自分が誇らしく思えた。

だってあの人は、それほどまでに素晴らしい人なのだから!…とはいえ。

 

「僕は…そんな凄い人じゃないよ」

 

当の本人が、自分のことをどう評価しているかといえば……。

 

「え? でも、おや…ンンっ、お父様もそう言ってますよ?」

「それは…買いかぶりだよ」

 

困ったように微笑んで、首を横に振るだけだった。

 

アサビケシンが愛する人は、通常なればピークが過ぎている今となっても観衆に人気のアイドルだ。

ひたむきに走る姿に勇気をもらう、だとか。

どんなときでも諦めないその姿に憧れる、とか。

レース後のウイニングライブではいつも笑顔で手を振ってくれるから嬉しい、とか。

とにかく、そういった理由でファンが多いらしい。

 

だがしかし、本人はそのことをあまり喜ばしく思ってはいないようだった。

曰く、「僕なんかよりもずっと…」と自分を卑下する言葉ばかりを口にしていた。

それがアサビケシンには許せなかった。

どうして自分が自分を()()()()()のか、理解ができなかった。

ので何度も説得を試みたのだが、結果は芳しくなかった。

あの人はいつまで経っても、自分自身のことを過小評価する癖があったからだ。

だから。

 

「俺と結婚しろ!」

 

引退したばかりの愛しい人の胸ぐらを掴み、そう吠えた。

もう、逃がしやしねぇ。

「キミには僕よりもお似合いの人がいる」、「僕みたいなおじさんよりも」なんて言葉は聞き飽きたんだ。

俺はアンタが良いんだよ。

他の誰でもなく、アンタが欲しいんだ。

という訳で結婚してくれ!

 

───まぁ、そういうわけである。

もちろんのことながら、突然の結婚宣言に周囲は大騒ぎになったが。

 

「…仕方ないなぁ、アサちゃんは」





【銀の祈り】の嫁:
アサビケシン。
名前の由来はドリームキャッチャーをオブジワ語で読んだ「asabikeshiinh」。
父ドリームジャーニー母父ダンシングブレーヴ。
のちに【銀色の激情】を産む。

史実では牧場産まれ牧場育ちの幼妻系牝馬。
だがひっっじょーに気性が荒かったので未出走→繁殖入り。
でも幼き日に一目見た【銀の祈り】しか嫌!したので仕方ないね、になった。
まぁ【銀の祈り】も嫁に好かれて満更ではないみたいなので…。

性格的にはホワイトリリィに似ている。
自己肯定感低い伴侶をヨシヨシ全肯定しては、ひとたび伴侶をバカにされるとキレ散らかすタイプの模様。

【銀の祈り】:
シルバープレアー。
はじめは嫁に対して「子どもの初恋になれて光栄だな」と思っていたが年を経るにつれて「これ本気だ!?!?」となる。なった。
なので必死に断り文句を探したのだが高火力の逆プロポーズをカマされてあえなく撃沈。
なおそれを見て、祈りの親友兼義父となった【夢への旅路】さんは力強くガッツポーズしていたらしい。俺、お前、家族!!!!
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