さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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七夕って何しましたっけね。
七夕に因んだゼリー食べた思い出しかないわよ。



たなばた

「たなばた、ね」

 

むかしは、それこそ小学生ぐらいの時は色とりどりの紙に印刷された短冊にマジックで願い事を書いたものだが。

今となっては特段何をするでもなく、そういやそんな行事あったなという感じだ。

 

「だから、あの子たち竹なんて持って帰ってきてたんだね」

 

なるほどなるほど、と頷きながら書類仕事を進める。

 

 

「ん?」

 

夜。

ちゅるちゅると、ようやく自身の分のそうめんを食べ終わって息をついているとまだ幼い寄りの子どもたちが走ってきた。

わぁわぁと次から次へ話しかけてきた言葉を要約するに、僕が短冊に何を書くのかと。

 

「う〜ん」

 

そう言われたら…『無病息災』とか?

そもそも僕自身神頼みというか、そういうの信じてないしなぁ。

それに、子ども時代に書いた短冊の内容を思い出してみても大概が『家族みんなで幸せに暮らせますように』とかみたいな内容だったし。

まあ、こういうイベントごとではお決まりのお願いってことなんだろうけど。

 

「…そう」

 

とは言え。

なんと答えようか考えている内に子どもたちの興味は逸れたらしく。

『足がはやくなりますようにって書いたの!』とか『成績上がりますようにって書いた!』などと。

 

「じゃあ、お星様に見えるように高いところに飾っておいで」

『はーい!!』

 

 

「父さんは」

「んー?」

「七夕だけは忘れがちですよね。それ以外の行事は基本前もって準備するのに」

「…そうかな」

「そうですよ」

「まぁ…学校でするだろうし、いいかなって」

 

父に連れ添い、家のそばを散歩する。

着流しを着た父の顔は夜闇に紛れて、よく見えない。

 

「ねぇ、」

「はい」

「キミは、何を願ったんだい?」

「僕ですか?」

「うん」

 

父の目は空を向いたまま。

 

「七夕ってのは、自分の力で成し遂げられる目標や夢のことを願うといいらしいね」

「そうなんですか……」

「うん。それで?キミは何を願ったの?」

「えっと……僕は、ですね」

「うん」

「その、」

「ゆっくりで良いよ」

 

父は相変わらず空を見上げているけれど。

僕の言葉を待ってくれていることはよく分かった。

 

「僕は……これからも良き兄でいられるように、と」

「へぇ、ハイセイコらしい」

 

ふわりとした笑い声と共に頭を撫でられた。

 

「でもさ、」

「はい」

「もし何か困ったり悩んだりしたならいつでも相談しなさい。溜め込むのは体に悪いからね」

「……ありがとうございます」

 

頭を撫でる手の温度は、よく分からない。

じっとりとした湿度に呑まれては、そちらに気を取られる。

 

「…じゃ、そろそろ家に戻ろうか。さっぱりしたくなってきた」

「そうですね。そろそろ、帰りましょうか」





僕:
シルバーバレット。
行事には基本積極的だが七夕は忘れがち。
何かに願うより自分で掴み取りに行った方が速くない?の思考回路をしている。
たぶん短冊書いてもそれっぽいこと書いて言葉を濁してそう。
だがそれはそれとして、…素麺美味しいね。
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