さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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少し時期的には早い話ですが。

…なので絡めとって、傍に置く必要があるんですね(白目)



"呼び声"

「海に行きたい」

 

暑い夏の日。

グローリーゴアの親友がそう言った。

 

 

周囲にいる者なら誰もが知っている事実だが、グローリーゴアの家はそこそこの良家である。

なので頼みさえすれば使える別荘も幾らかあり、その中のひとつ-海辺にあるコテージにグローリーゴアとその親友-サンデースクラッパは訪れたのであった。

 

「さっきの買い物で数日は持つと思う」

「そう」

「今日は無理だが明日は天気がいいらしい」

「…うん」

 

だが。

グローリーゴアはソファーに身を寄せる親友を見て思考する。

どうにも、ここ二、三日前からうわの空。

話しかけてもぼんやりとした返答しか返さず、いつもの朗らかな笑みもウソのように消え失せている。

何かあったのか? と聞いてみても首を横に振るだけ。

ただただぼうっとした表情を見せるばかりだ。

 

 

「スク!」

 

名を呼ばれ、掴まれた手が軽く軋むのにビクリと反応する。

見上げた先には煌々と輝く月。

振り返ればゼェゼェと息を荒らげる親友。

 

「あれ、?」

 

思えば。

もう少しで腰の辺りまで、水の中。

それを理解した瞬間にドッと体が重くなる。

着衣泳なんぞ慣れてないから当然か。

 

「なぁんで……」

 

こんな事をしているんだろうね。

呟く声と共に意識が落ちていく。

 

 

「そろそろお盆だね」

「お盆?」

「うん。こっちで言うところの…ハロウィン?みたいな」

 

たしか、そんな話をした気がする。

制服が半袖になり、汗をかくようになって。

なら涼みに行きたいね、という話からのはずだった。

…はずだと、思っていた。

 

「あのね、」

「……あぁ」

「この時期になるとね、()()()()()んだ」

「……」

「水とか、反射するところで時々、本当に時々視えるんだけど」

 

この時期が、いちばんだから。

そう漏らす親友の目は、ナニカに浮かされているようで。

 

「ウチの家族ね、海には、()()()()()連れてってくれないから」

 

あえるのにね。

音もなく、呟かれた言葉が嫌に重い。

がらんどうの眼差し。

だけれども"誰か"を視ている眼差し。

その視線を追ってみるけれど何もいない。

何も無い。

だというのに。

なぜだろう。

この背筋を走る、寒気は。

 

 

はじめて"あなた"を視たのはいつだったろう。

雨が上がったあとに残った水溜まり?

それとも自分一人だけで外を眺めていた時の、窓ガラスの中だっけ?

 

"あなた"はいつも笑っている。

誰よりも楽しそうな笑顔を浮かべていて。

でもそれはきっと作り物なのだと、僕は知っていた。

だって、ほら。

今の"あなた"の顔ときたら!

 

『ねぇ』

 

初めて声を掛けられた時、正直言って怖かった。

だけど今となっては懐かしい思い出話だ。

何故なら…。

 

 

ひとりは、さびしい。

呼んでるつもりはないのだけれど、やさしいあの子はふらりと来てしまう。

だから必死に我慢しようとしても、さびしい想いは…。

 

───誰か、むかえに。





【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
【戦う者】を誰にも、()()()渡したくない。
遊びに来て、深夜(抱き枕がわりにして)腕の中にいた【戦う者】が抜け出した気配に着いていったらヒエッヒエに。
結果、過保護度(しゅうちゃく)が指数関数的に上がっては【戦う者】にベッタリに。
…まぁ、悪いのは誰かって言われたら、仕方ないっていうか……ハイ。

【戦う者】:
サンデースクラッパ。
よばれた。
けれども呼んだ相手を『怖い』と思うことはない。
それは、今までもこれからも。
何故なら、『やさしい人だ』と()っているが故に。
……そんなんだから、よばれるんだよ。
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