愛した女と愛された男。
女にとって、その男は『光』であった。
特段面白みもないバ生をこれからも、終わりまで歩むのだと思っていた矢先に現れた男。
『すみません、貴女が××さんですか?』
ほんの戯れに送った要望書。
きっと外れると思い送ったソレが叶ったと知ったのは、それからすぐの事だった。
『貴女はいい人ですよ』
男にとっては普通の言葉でも。
女にとってのソレはひび割れていた心を補修するもので。
自分ですらも認めなかった自分を、自分のすべてを、肯定してくれるさまはいっそ神々しいほどで。
だから……だからこそ。
「───」
あの時。
男の目の前に立っていた自分ではない女を見て、女は背筋が凍るような感覚を覚えた。
それはまるで、未来永劫の仇に出会ったような。
そんな、ぐじゃぐじゃと、それでも自身を焼き尽くさんとばかりの熱情に恐れを感じる暇もなく、女は。
『あなたが、見出したのは』
──"わたし"でしょう?
あぁ、嗚呼、かの清姫はこのような気持ちだったのか!
愛した男が他の女性を愛している姿を見てしまった時の、このどうしようもない感情!
胸中を埋め尽くす嫉妬心!独占欲!
そして何より……憎悪!!
どろりと濁りきってなお、燃え盛らんとする激情のままに、女はその身を修羅へと転じた。
それまでは男に『綺麗だね』と褒められたから丁寧に手入れしていた髪も爪も何もかもを捨て去って。
ただただ己の目的を果たすためだけに、女の意識は塗り潰された。
戻ってきて、戻ってきて、戻ってきて…私の元に!
どんな相手にでも笑いかけるところが好きだった。
誰に対してもやさしく接するところが大好きだった。
けれど、それを向けられる相手がいる事が許せなかった。
だって私はこんなにも貴方が好きなのに。
ねぇどうして?
なんで貴方の隣にいるのは私じゃないの?
ずるいよ。
そこは私の場所なのに。
「どうして」
どうしてどうしてどうして!!?
なんであんな醜悪なモノを傍に置いているの?
あんな汚らしいモノが傍にいたら汚れてしまうじゃない!!!
私が守らないと。
そうしないと、
「あなたが、あなたじゃなくなっちゃう」
なら仕方ないよね?
貴方を守る為なんだものね?
これは必要なことなんだよ?
…………だから間違ってない。
私が、貴方を、
「
ふわり、と。
まるで花のように微笑んだ女は、そのままゆっくりと手を伸ばして。
かつて撮った、ツーショットを心底から愛でるように、するりと撫でた。
・
・
・
「おかぁ、さ」
自身を呼ぶ、弱々しい声なぞ遠に、聞こえぬまま…。
女:
どこにでもいる誰か。どんな誰でも成り得る誰か。
貴方は私だけに笑っておけばいいの。
または自分以外を愛する男に解釈違いを起こしているともいう。
その狂い度は自分が腹を痛めて産んだ子を顧みないほどであり、万が一顧みたとしても男を取り戻すための『駒』としてしか見ない模様。
…おお、怖い怖い。