さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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まぁ、本人にとっては幸せですから。



あなたが(しるべ)

新調したての手袋でぺたぺたと触れると「くすぐったい」と微笑まれた。

「相変わらず肌触りがいいねぇ」との褒め言葉に、褒められているのは自分ではないくせに嬉しくなる。

 

「でも、家の中なんだしもうちょっとラフな格好してもいいんだよ?」

「…はい。けれど、この格好が一番楽なので」

「そう?」

 

お前、傍目から見たら執事みてぇだな。

そう、同室である"きょうだい"に言われたのは何時ぞやのことだったか。

シワひとつないオーダーメイドのスーツにきっちりと締められたネクタイ。髪も後ろへ撫でつけているから一見すれば確かに堅苦しい印象を受けるだろう。

しかし、これは自分の性分であり勝負服なのだ。

だから仕方がない。

 

「あぁそうだ。父さん、お茶はどうですか?そろそろ煮詰まってきたのでは?」

「ん〜?いや、大丈夫大丈夫。まだへーきへーき」

「……そうですか」

 

あなたが誇れるような自分(子ども)でありたくて。

心の内のぐしゃぐしゃを押し殺しては"良い子"の皮を被る。

服装だって、好きな物だって、…よく分からない。

それが世間様にとって『普通』で、どうなったってカドが立ちそうにないやり方だから選んだだけだ。

……本当は。

 

(…………なんて)

 

そんなこと、口には出せないけど。

 

 

昔から。

あの子は、"シロガネハイセイコ"は、控えめな子どもだった。

甘えベタで、それでいて聡くて。

諭すことなど、そうなかったし、もし諭したとしても一回で言うことを聞く子で。

けれども。

 

「ハイセイコ、どれがいい?」

 

そう聞くたびに、あの子はキョトンとした顔をした。

色とりどりの、鞄だったり、もしくは様々なものが並ぶ棚の前で。

他の子たちは各々それぞれが、「これがいい」「あれがいい」と選んでいるというのに。

あの子だけは、手を伸ばすことすらせず。

いや、そもそも棚にさえ、目を()()()()()()か。

 

「…ハイセイコ?」

 

あの子が見ていたのは、いつだって僕だった。

じい、と黒の目で。

しっかと手を繋いだ、父である僕のことを。

ただただ真っ直ぐに見つめていたのだ。

その目に映る感情を、当時の僕は読み取ることができなかったけれど。

今なら分かる気がするんだ。

きっとそれは。

───親愛とか敬愛だとかそういう類のものだったんじゃないかなってさ。

 

「コレとか、ハイセイコに似合うんじゃない?」

「…」

 

ちょっと高い位置にあった商品を何とか取り、手渡す。

似たようなことはそれからも。

同じように、変わらず。

 

「…じゃあ、コレにします」

「うん」





【銀色のアイドル】:
シロガネハイセイコ。
服が基本正装か、よくてそれっぽい感じなウマ。
決してカジュアル〜な服装をしない。決して。
また行動指針が全部父。
父さんがそう言うからの極み。
そう聞くとロボットっぽくもあるけれど、でも父親に対しての情が重すぎるので…。
そう考えると意思を持ったAIに近い…のかなぁ?

僕:
シルバーバレット。
約束されしクソニブ兼父親。
【銀色のアイドル】のことをフツーに良い子だと思っているし、それは間違いない。
けれど【銀色のアイドル】が父である自身にどのような感情を抱いているかを今までもこれからも察することは出来ないので…ハイ。
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