哀れだな。
あのジャパンカップで。
僕は、父を超えられなかった。
けれど
「あぁ、おかえり」
ふらり、と唐突に帰ったのに父はそんな僕を笑顔で受け入れてくれた。
───いつもの優しい笑みではなく、
「……ただいま」
その父の顔を見て、思わず口角が上がってしまう。
父さんのこんな顔、初めて見たから。
「どうだった?」
「…うん、まあまあかな? でもやっぱりまだまだだと思ったよ」
「そう…」
自分という存在を舐めるように見やる視線に、何かを喋ろうとしては口を噤む動きに、背筋がゾクゾクとする。
父さんが…僕を、
誰も彼もに平等で、博愛主義な父さんが。
自分の欲を剥き出しにして、僕のことを
「……っ!」
……やばい。
これは、想像以上にクるものがある……。
「それで、次はどこへ行くんだい?」
「えっとね……とりあえず、海外に行く予定」
「……へぇ、」
漏れ出た声は何かを抑えるように。
抑えきれない感情を抑え込むかのように。
「そう、」
抑え込んだまま、
*
「哀れだな」
嘲るようにそう告げるとギッ、と射殺さんばかりに睨まれてヘラヘラと笑いながら降参のポーズを取る。が、
「アレは、お前を見てるワケじゃないだろ」
脳裏に浮かぶのは俺たちの"源流"たるウマの姿。
普段は凪いでいつつも、いつだって自分に至りうる存在を求めて逍遥する怪物…。
そんなモノに囚われて、やまないお前。
「アレは誰でもいいんだよ」
「……」
「俺だろうが、お前だろうが、誰であろうが関係ない。ただそこにいる誰かが
だから、気に食わない。
俺はお前を見ているのに。
お前にとっての俺はその他大勢に過ぎないということが。
そして何より、それが分かっているのに諦めきれない自分が、そんなお前に
……それでも。
「俺はお前じゃなきゃ嫌なんだ」
絞り出すような声で漏らした声は、我ながらあまりに悲痛で。
またくつり、と嗤う自分に勘違いしたお前が吠えてくるけれど。
「違ぇよ」
ただ、それだけは否定しておこうと思って。
「お前はお前だって話だ」
あの日、あの時。
確かに出逢った時からずっと変わらない想いを込めて。
「お前はお前のまま変わればいい」
そう言うと少しだけ驚いた顔をしたあと、「ありがとう」と少し不満げな顔でお前は、俺に…。
【銀色のアイドル】:
シロガネハイセイコ。
今日も今日とて父親しか見ていない。
JCにて頑張った結果、父が自分を見てくれて嬉しいが、それは自分自身を見たものではなく結果を出してさえいればどの相手にも
でも、それでも、嬉しいの。
【銀色のヒーロー】:
シロガネヒーロー。
父に焦がれるお前に焦がれている。
こっちを見て欲しいとずっと願っているが、父を見ていないお前は俺の焦がれたお前ではない、という矛盾を抱えては自嘲中。
でも他よりは見てもらえてるんだよね…。