さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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"星"を墜として、引力のまま。



それは"月"を射墜とした狩人のよな

いつか"星"になれるだろうその人を、射ち墜とそうと思ったのはいつだったろうか。

何もかもを呑み込んでいってしまう黒い"星"を手中に収めねばと考えたのは。

 

"星"を、目指していた人だった。

僕には見えない"星"を見て、そしてその"星"を追いかけることが許された、そんな人だった。

 

"星"を目指して藻掻く体を引き倒し、羽交い締めにして、そうして僕は"星"になれたはずの人を地に引きずり墜としたのだ。

それは、ただの我儘でしかなかったけれど、それだけは許せなかったから。

その人が僕にくれたものは、僕の中に芽生えた感情は、とても綺麗なものとは言えない。

何故なら、それが『綺麗』であったのなら、その人が"星"になるのを心の底から祝福できたはずだからだ。

でも、違ったんだ。

だからこれはきっと、ただの汚らしい『欲望』でしかないのだと思う。

 

「……っ」

 

喉が詰まる。

涙が出そうになる。

(そら)から引きずり墜ろされたその人は、僕を信じられないというような目で射抜いて。

それから『軽蔑』とも呼べないくらいに真っ暗な目で見つめてきた。

僕のことを嫌いだとも言わなかったし、責めのひとつもなかった。

ただ"星"は墜ちるとこうなるのだ、とでもいうようにひっそりとするのみで。

あの時、僕は自分がしてしまったことにようやく気がついた。

自分の中の醜さに気がついてしまった。

もう二度と、その人には会えないだろうと思った。

それなのに。

 

「グローリー」

 

 

ぐらりと体が傾いたのは突然だった。

ずっと見えていた"星"に手を伸ばして、触れられるか触れられないかのところで。

伸びてきた熱い手が、僕の体に巻きついて、グイと地面(した)に引っ張った。

そのまま背中に強い衝撃を受けて息ができなくなって、咳き込みながら目を開ければそこには。

 

「……あぁ、良かった。無事だね?」

「なんで……」

 

いるはずがない人の顔があった。

どうしてここに?とか、どうやってここまで来たの?とか、聞きたいことはたくさんあったのに、僕を見つめる瞳があまりにも…泣きそうだったから言葉が出てこなくなってしまった。

 

「……ごめんなさい」

 

やっと出てきた謝罪の言葉にも、キミは首を横に振るばかりで。

何に対して謝っているのか自分でもわからなかったけれど、とにかく何かを口にせずにはいられなかった。

 

「本当にすみませんでした……。こんなところまで来てもらって、迷惑かけてしまって」

「……」

 

無言のキミが、これまた無言の僕の手を引く。

引かれるがままに進んでいると、今度は正面から抱きしめられた。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

慌てて押し返そうとするものの、腕ごと抱き込まれてしまっているせいで上手くいかない。

なんとか抜け出そうとしているうちに、耳元で声が聞こえた。

 

「よかった……間に合って」

「え……」

 

一瞬、何を言われたかわからなくて動きを止める。

すると、すぐに体を離されて、代わりに両手を強く握られる。

真っ直ぐに見つめられ、思わず視線を外すと「こっちを見て」と固い声音で言われてしまう。

 

「…なに」

「いまさら、僕がキミを手放せるとでも?」

 

ぎち、と軋む手が鈍く痛む。

 

「どうしてもなるっていうなら、…僕のためだけの"星"になって」

「……は!?」

 





【戦う者】:
サンデースクラッパ。
"星"になりたかった、"星"になる資格のあった人。
けれど(そら)に登れずに引き墜とされた。
でもそれでいいかと最終的には受け入れたらしい。

【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
いつか、誰かを照らす"星"となるのなら、僕だけの"星"で在って。
【戦う者】が"星"になる資格があったのだとしたら、こちらは"星"を引き摺り墜とせる資格があった。
『想い』という名の引力。それは今日も今日とて…。
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