"星"を墜として、引力のまま。
いつか"星"になれるだろうその人を、射ち墜とそうと思ったのはいつだったろうか。
何もかもを呑み込んでいってしまう黒い"星"を手中に収めねばと考えたのは。
"星"を、目指していた人だった。
僕には見えない"星"を見て、そしてその"星"を追いかけることが許された、そんな人だった。
"星"を目指して藻掻く体を引き倒し、羽交い締めにして、そうして僕は"星"になれたはずの人を地に引きずり墜としたのだ。
それは、ただの我儘でしかなかったけれど、それだけは許せなかったから。
その人が僕にくれたものは、僕の中に芽生えた感情は、とても綺麗なものとは言えない。
何故なら、それが『綺麗』であったのなら、その人が"星"になるのを心の底から祝福できたはずだからだ。
でも、違ったんだ。
だからこれはきっと、ただの汚らしい『欲望』でしかないのだと思う。
「……っ」
喉が詰まる。
涙が出そうになる。
それから『軽蔑』とも呼べないくらいに真っ暗な目で見つめてきた。
僕のことを嫌いだとも言わなかったし、責めのひとつもなかった。
ただ"星"は墜ちるとこうなるのだ、とでもいうようにひっそりとするのみで。
あの時、僕は自分がしてしまったことにようやく気がついた。
自分の中の醜さに気がついてしまった。
もう二度と、その人には会えないだろうと思った。
それなのに。
「グローリー」
*
ぐらりと体が傾いたのは突然だった。
ずっと見えていた"星"に手を伸ばして、触れられるか触れられないかのところで。
伸びてきた熱い手が、僕の体に巻きついて、グイと
そのまま背中に強い衝撃を受けて息ができなくなって、咳き込みながら目を開ければそこには。
「……あぁ、良かった。無事だね?」
「なんで……」
いるはずがない人の顔があった。
どうしてここに?とか、どうやってここまで来たの?とか、聞きたいことはたくさんあったのに、僕を見つめる瞳があまりにも…泣きそうだったから言葉が出てこなくなってしまった。
「……ごめんなさい」
やっと出てきた謝罪の言葉にも、キミは首を横に振るばかりで。
何に対して謝っているのか自分でもわからなかったけれど、とにかく何かを口にせずにはいられなかった。
「本当にすみませんでした……。こんなところまで来てもらって、迷惑かけてしまって」
「……」
無言のキミが、これまた無言の僕の手を引く。
引かれるがままに進んでいると、今度は正面から抱きしめられた。
「ちょ、ちょっと!」
慌てて押し返そうとするものの、腕ごと抱き込まれてしまっているせいで上手くいかない。
なんとか抜け出そうとしているうちに、耳元で声が聞こえた。
「よかった……間に合って」
「え……」
一瞬、何を言われたかわからなくて動きを止める。
すると、すぐに体を離されて、代わりに両手を強く握られる。
真っ直ぐに見つめられ、思わず視線を外すと「こっちを見て」と固い声音で言われてしまう。
「…なに」
「いまさら、僕がキミを手放せるとでも?」
ぎち、と軋む手が鈍く痛む。
「どうしてもなるっていうなら、…僕のためだけの"星"になって」
「……は!?」
【戦う者】:
サンデースクラッパ。
"星"になりたかった、"星"になる資格のあった人。
けれど
でもそれでいいかと最終的には受け入れたらしい。
【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
いつか、誰かを照らす"星"となるのなら、僕だけの"星"で在って。
【戦う者】が"星"になる資格があったのだとしたら、こちらは"星"を引き摺り墜とせる資格があった。
『想い』という名の引力。それは今日も今日とて…。