さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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【金色旅程】さんとはまた別軸での執着というか。



擬似的な、"帰り"を待っている

シルバーチャンプは、あるウマのことが苦手である。

そのウマを見ると、…どうしようもなく連想されてしまう"ある影"があるので。

 

「なのに、あっちの方から絡んでくるからなぁ…」

 

ため息をつくこともできない。

無下にすることも、できない。

その相手が、多少なりとも無理強いをしてくるのだったら跳ね除けることぐらいはできるだろうに。

 

「こんにちは、チャンプくん」

「…ッ、」

 

少しづつ、少しづつ、距離を詰められる。

まるで警戒心の強い小動物にでもなったような気分だ。

その相手-こと、サイレンススズカは今日も飽きもせず、自分に関わってくるのだ。

 

(いや、だ)

 

"似た影"を、知っている。

…からこそ、触れられた先で、その"熱"を、知るのが怖い。

だから、関わり合いになりたくすらない。

関わったら、疵になる。

そう思ってしまうほどには、相手は自分にとって"特別な存在"なのだと自覚している。

そしてそれは相手も同じだと、薄々感じてもいる。

ただ、それを言葉にしてしまえば、何かが崩れてしまう気がしてならない。

そんな不安感があるからか、どうしても向き合うことができないでいる。

 

いつか、"去る"と言うのなら。

勝手に去っていけばいいものを。

どうして。

…どうして?

 

 

己を見て、びくりと震える体だった。

出会ったのは、ただの偶然。

だが気になったのは…必然。

そのウマは、怯えていた。

己の、"サイレンススズカ"の走りを見て、()()()()()

多くの人が『夢』を見る己の走りに、恐怖していた。

 

そして。

あの日、あの時、あの場所(毎日王冠)で。

それが分かった瞬間、己の中で何かが変わった。

今まで見えていなかった()()が見えた。

今にも消えてしまいそうな小さな灯火のような、誰かの『夢』を見た。

それが何なのか、詳しくは分からなかったけれど。

それでも確かに見た()()はあった。

 

「…チャンプ、くん」

「いかないで。おねがいだから、おれにできることなら、なんだってするから」

 

怯える声が、いっそうの震えをもつ。

キミの目には、いったい"何"が見えているのだろう。

でも。

 

「大丈夫」

「、」

「戻ってくる。キミのところに、()()に」

 

泣かないでほしいなぁ、と思った。

初めて出会った日から、今日までずっと、ココロが泣きっぱなしのキミだから。

『いかないで』と、ワガママが下手っぴなその手を取った。

きっとこの手を放っておいたら、もう二度と会えないんだろうなって思ったから。

だから、絶対に離さないようにした。

キミの手は、こんなにも小さいのか。なんて思いながら。

 

「約束」

「……はい、」

 





【異次元の逃亡者】:
サイレンススズカ。
重ねられる"影"があるウマ。
自分の姿を見て、ずっと怯え通しのキミの笑顔が見たくて。
フワッとニュートラルな顔しながらも案外重そう。
今ここにいるのはサイレンススズカ()だ、って感じに。

【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
怯えている。
似ているから、疵になる前に離れたかった。
でも、離れられなかった。
帰ってきて。どうか、どうか、…あなたは。
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