さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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僕でも、いい"はず"でしょう?



その目に映るのは、

その眼を知っていたのは、スペシャルウィークただひとりだった。

己の同室である先輩を見つめるその瞳を、知っていたのは。

 

『お前の同室、苦手なんだよな』と宣う割には、熱烈で。

『いやー、副会長さんも大変そうだなぁ…。また追いかけっこしてやがる』などと苦笑する割には、嬉しそうで。

『───まぁ、苦手ではあるけど…嫌いではねェよ』と言う。

そして何より、

 

『───────』

 

"その姿"を見つめる眼差しが、あまりにもキラキラしているものだから。

その目を向けられていることが、羨ましくなるくらいに。

 

「また、見てるの?」

「っ!?」

 

ぼう、と思考に浸っていた目が覚める。

驚いた顔が、自分の姿を映してようやっと、ホッと安堵の息をついた。

 

「なんだ、お前か」

「お前か、って酷いなぁ」

「だってそれ以外にないだろう?」

 

チラ、とその隣に並ぶ一瞬で見た走り姿は今日も美麗で。

サラリと流れる栗毛が陽光を浴びて煌めいている様を見てしまえば、確かに見惚れてしまうのも…。

 

「それだけ見てるなら、話しかけに行けばいいのに」

「バカ言うな」

 

繰り返しの問答。

でもそれに安心してしまうのもまた事実。

たしかにあの人は、スズカさんは尊敬できる人だけど。

でも、それでも。

 

(僕を、見て)

 

キミと普段を共にしているのが【金色旅程】先輩だとしたら、キミの目を奪っていくのはスズカさんで。

何でか、どうしてか、そのことを考えるたびに心がモヤモヤする。

『そのふたりじゃなくて』って。

『自分でもいいでしょう?』って。

何故だか感じるシンパシーゆえに、そう、考えてしまう。

これは嫉妬なのだろうか。

それとも、また別の…。

 

「…スペシャルウィーク?」

 

怪訝そうな呼び声にハッとする。

見れば心配げに見上げてくる瞳があって、「大丈夫だよ」と笑って見せた。

…本当は全然大丈夫じゃないけれど。

 

「それで?何か用事でもあったのか?」

「あー……」

 

問われたことに少しだけ悩んだ。

用事などない。

ただ単に一緒に居たかっただけだなんて、()()()()()()()()()()()()()なんて。

そんなことは口が裂けても言えやしないのだ。

だから僕はこう答えるしかないんだろう。

 

「特にはないかな」

「そ」

 

ふわりと笑う。

いつもと同じ笑顔なのに、どこか違う気がするのは気のせいではないだろう。

きっと、僕の気持ちの問題なのだ。

"感情"という名のフィルターがかかっているから、そんな風に見えるだけ。

 

「…………ねぇ」

「ん?」

「明日さ、併走に付き合ってもらってもいい?」

「別に構わないが……急だな」

「うん、まぁ、ちょっと行きたいところがあるんだけど、ひとりで行く勇気が出なくって」

「…あぁ、そういうこと」

 

……いくじなし。





【日本の総大将】:
スペシャルウィーク。
ちょっとしたシンパシー(またの名をSS…)ゆえに【金色旅程】や【異次元の逃亡者】じゃなくて、それ自分でもよくない?という気持ちを抱いているすがた。
案外しっとり気味だし、内心いろいろと考えている。

【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
【異次元の逃亡者】に"ナニカ"を重ねている。
重ねている、ので心配もひとしお。
また【日本の総大将】以外に、【怪鳥】にも【異次元の逃亡者】を見ていることに関してあれこれ言われている。
逃げウマなら誰でもいいんだろって!?
……。そんな訳ねェよ!!!!
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