掴めないのは、どちらも同じ?
「…あまり、惑わしてやるなよ」
「キミがそう気にかけるなんて、珍しいね」
「ほざけ」
あまり話しかけないクラスメイトに、そう話しかけたのはひとえに…可愛がっている後輩-シルバーチャンプが、このウマと親しいからだ。
「アイツも、ただの人間だぞ」
「そうだね」
傷つく時は傷つくし、確固とした軸はあれどオリハルコンでもない。
その言葉に、少しだけ驚いたように目を見開いたソイツは……しかしすぐに、いつものように微笑んでみせた。
「でも、だからこそ僕はあの子に"僕"を、僕の"走り"を、見て欲しい」
「…お前らしい答えで安心したよ」
「ありがとう」
それじゃあまた明日。
そう言って去っていく背が、どこか。
*
その目に抱く『憧れ』が、自分ではなく、自分
自分ではなく、自分よりも
気づかなかった方が『幸せ』で、それでいて気付かなければよかったと思うほどには、もう手遅れだったのだけれど。
「チャンプくん」
「…他の人に頼めばいいでしょ。ほら、同室のアイツとか」
「キミじゃなきゃ…ダメなんだ」
「……さいで」
決して何も映さないように努めている眼が光り輝く様はまるで朝焼けのよう。
「けほ、」
「はい」
「あ、ざっす…」
近くにあった自販機で買った飲み物を渡すと汗を乱雑に拭いながら一気飲み。
それにしても、やはりこの子は強い。
G1には未だ未出走だけど…これは期待をかけられるはずだ、と思うくらいには。
抜こうとはしないまでも、長時間一定の距離を保ちながら自分に着いてこれる追走力。
そして何より……。
「今日はこれぐらいにしとく?」
「……いえ、まだいけます」
「そっか」
まだまだ余力はあるだろうけど、まぁ本人がやる気なら止める理由もないか。
「息は整った?」
「はい」
「じゃ、行こうか」
*
そのウマを初めて見たとき、『風』だと思った。
掴めないのは"星"と同じだけれど、
「……は、」
『風』に乗る。
ただそれだけなのに、どうしてこんなにも気持ちいいのか。
それはきっと、自分がいま『風』になっているからなんだろうと理解すると同時に。
……ああ、自分はこのまま消えてしまうんだろうなという予感があった。
だって、あまりにも心地よくて、温かくて、優しくて。
だから。
「チャンプくん!」
「え、あ…」
「よ、よかった。…軽い熱中症みたいだから、いま迎えを呼んで」
「いや、大丈夫です。走って戻れ…っ、」
「ああ!」
立ち上がろうとしてぐらりと傾く体を支えられ。
「すぐ来てくれるって言ってたから。ね?」と諌められては。
「…わ、かりました」
【異次元の逃亡者】:
サイレンススズカ。
自分を通して、自分以外が見られていることを知っている。
故にグイグイ絡んでいって
でも、やめるつもりはない。
───『風』と言うのなら…包み込んであげようか?
……ねぇ、【銀色の王者】?