さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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【あのウマ】の血に連なるが故の雰囲気?気配?って、ありそうだよね。



良き先輩と

ソイツと同室になったのは、ただの偶然で。

『大人しい子だから』と、入学してきたソイツを俺が受け入れたのは一重に寮でひとり部屋だったのが俺だけだったという純然たる事実からであって。

…とはいえ。

 

「……なぁ」

「は、はい?」

「お前さ、なんでそんな喋んねーわけ?」

「えっ」

「いや、だってよォ、いつも黙ってるじゃねぇか。朝起きた時も風呂入るときも寝る前もずっと。んで、俺の前だけそうなのかと思ってもクラスでもそうみたいだしなァ?」

「……」

 

喋ろうとして、口を噤んで。

それがどうにも泣くのを堪えている子どものように見えて嘆息する。

が、それを呆れだとかそういうのだと勘違いしたのかどうかは知る由もないが、ソイツは慌てたように口を開いた。

 

「あ、あの……その……ごめんなさい……」

「ア?何謝ってんだよ」

「だ、だって!せっかく話しかけてくれたのにおれ、何も話せないし……。それに、先輩だってこうやってよくしてくれんのに、でも、えっと…」

 

ぎゅう、と自身の手を強く握り締める様にちょっとした見当をつけて。

わしゃり、とその頭を撫でればひどく震えられるのに、ひくりと口元が引き攣るのが自分でもよ〜く分かった。

…コイツが家族から愛されているのはほぼ毎日『家族から電話来てるよー』と呼びに来る寮の奴らがいるから知っている。

ならばこれは…、

 

「え、ぁ、…せ、せんぱい?」

 

びく、と怯えを隠そうともせず身体を震わせる姿に舌打ちをしたくなる衝動を抑えて、そのままぐしゃりと乱暴に髪を掻き混ぜるようにして手を離せばきょとんとした顔をされる。

 

「俺は曲がりなりにもテメェの先輩なんだぞ。ンなこと気にすんじゃねェよ」

「、」

「で、何か言われたらすぐに言え。俺が何とかしてやるから」

「……はい、先輩」

 

 

昔から、あまり人に馴染めない人間だった。

そこには血筋うんぬんもあるにはあったが、一番の理由は俺自身にあったのだと思う。

 

「……」

 

可もなく不可もなく、空気のようにそこにいる。

別にそれはそれで良かったのだが、小学生になった辺りだろうか。

周りの人間が徐々に変わっていったのである。

それまでは普通に接してくれていた子どもたちも次第に距離を置くようになり、そしていつしか排斥しようとするようになった。

 

「……」

 

たぶん、彼らは()()()()のだろう。

何をするでもなく、ただそこに在る自分が。

いつか、()()()()()()()()()()()()と、恐れたのだろう。

普通のごく一般的なウマならいざ知らず、【あのウマ】の血筋に連なるのだからと。

 

(まぁ結局はただの憶測に過ぎないけど)

 

ただ単に、彼らが自分より優位に立ちたかったのか。

はたまた単純に『そうしていい人間』と思っただけなのかは分からないけれど。

それでも当時の自分は彼らにとって恐怖の対象でしか無かったんだと思う。

だからこそ、距離を置かれても仕方がないと思っていたし、どうともしなかった。

でも体はそうではなかったようで、

 

「ヒッ!」

 

…嗚呼、またやってしまった。





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
何もしないが、どこか異様な存在感を持つ。
それは血筋ゆえなのか、それとも。
そしてその存在感のために同年代から疎外されていた過去を持つ。
その過去を精神は受け入れているが、肉体は…?

【金色旅程】:
先輩兼実は同室。
無視できない存在感がありながらも、どこか不安定な後輩の世話をしている。
何だかんだ言って面倒見がよさそう(こなみかん)。
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