さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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緑色の目をした怪物。



【トリックスター】は、緑の目をしていた。

「キミ、嫉妬とかしないんだね」

「そういうお前はすんのかよ?」

「まぁ…それなりには〜?」

 

にゃはは、と誤魔化し笑いをするものの、腹の中はグズグズと。

真っ暗な感情が蠢いては、自分を嗤う。

たしかに、成長するためには『緑色』の目をしているべきだと思うし、自負・嫉妬・貪欲の3つは人の心に火を灯す火花だという。

だから、この胸の中のモヤモヤした気持ちも、自分の中に宿る黒い炎のようなドロリとしたモノも、全部無視できるものではない、と受け入れてはいるが。

 

(あー……ダメだこりゃ)

 

心の中で苦笑する。

どうやら自分は自分で思った以上に意地が悪いらしい。

または、…欲深いのか。

 

「…………」

 

ふぅ、と小さく息をつく。

そして、ゆっくりと目を閉じて、開く。

すると、そこにはやはりいつも通りのセイウンスカイ(じぶん)がいた。

 

 

「『嫉妬とかしないんだね』、ねぇ…」

 

先ほど言われた言葉を反芻する。

嫉妬、嫉妬…。

 

「ンなの、ずっと()()()()()だよ」

 

嫉妬の先はずっと遠くて。

遠いから、近くに焦点が合わないだけ。

姿かたちもよく知らぬ相手に焦がれるように想いを募らせている。

他に見向きなんて出来やしない。

そんなこと、ムダだってくらいわかっているのに。

それでも、

 

「俺以外の誰かを見ないでほしいんだよ」

 

その瞳には自分だけを映してほしいのだ。

他の誰にも渡したくない。

そう思うことは罪なのか?

『憧れ』という地点すら飛び越えた先。

期待(ソレ)が重いと嘆くこともあるけれど。

それ以上に、

 

「俺は"あの人"の特別になりたいんだよ」

 

誰よりも近くで、一番近い存在として在りたい。

それはきっと、誰もが抱いている願望だろうけど。

でも、願わずにはいられない。

それがたとえ傲慢だと罵られても構わない。

ただただ、その"星"の特別でありたいと望む自分に嘘はないのだから。

 

「……」

 

夜空に浮かぶ月を見上げる。

今日は満月か。

雲ひとつなく、星々がよく見える。

 

「いいなぁ、アンタらは。…"あの人"と一緒に、輝けて」

 

 

遠くを見つめすぎた瞳は、いつしかボヤけるということを知ったのはきっと、あのウマと関わってからだろう。

『嫉妬しないの?』とかつて自分が問うた言葉を後悔するほどにどこまでも、果てしなく追い求めていた瞳を。

今ではもう、見ることはない。

それどころか、その姿を見ることさえ叶わない。

 

……否、違う。

本当は、どこかでは気づいていたはずだ。

いつか来る終わりを。

だからこそ、あんなにも必死になって追いかけてきたはずなのに。

今となってはその記憶さえも朧げになりつつある。

 

「オレも見て欲しかったとか…なんて、今更だよなぁ」





【トリックスター】:
セイウンスカイ。
それとなく【銀色の王者】に嫉妬していた。
だが、自分とは視座から違う嫉妬をしていた【銀色の王者】の眼を見てみたかったな…と少しばかりの後悔をしているウマ。
キミの目は、どんな色だったっけ?

【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
"あるウマ"にだけ嫉妬するウマ。
そして"星"に手を伸ばし、届きかけ、そして焼かれた只人でもある。
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