シルバーバレットがキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス、ムーラン・ド・ロンシャン賞を破格の強さで連勝したことは日本にも届いていた。
今現在で考えてみても年齢の行き過ぎている競走馬であったため心配されていたがそんなこと、小さな無敵の弾丸には関係ないようで。
意気揚々と凱旋門賞へ向かう背を誰もが期待して眺めていた。
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僕にとっての大本命のレースが近づいているのを肌で感じる。
ピリピリと張り詰めながら、体感温度が1、2度上がっているように思われる熱気。
そんな、僕に期待する人々の熱意を汲み取りながら僕は最終調整に入っていた。
凱旋門賞。日本の悲願。
そんな大事なものが僕に託されている。
その事実に対する興奮は、ジャパンカップの時と比にならないくらい。
僕のテンションが上がっているのを周りの人々も分かっているようで苦笑されるのを繰り返している。
…あ、そう言えばさぁ騎手くん。
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日本の悲願へ、少しずつ日が近づいてきている。
そのことに緊張しないといえば嘘になる。
まさか自分がこの場所に来れるなんて思いもよらなかった。
今だって、朝に起きるたびに嘘じゃないかって頬を抓ってしまうほどなのだから。
シルバーバレット。
小さなキミ。
初めてキミに出会った時、なんという馬だろうと驚いたことを覚えている。
初めてキミの速さに魅せられたのはきっと僕だろう。
キミに初めて出会った騎手が僕でよかった。
今までも、これからも、僕はずっとキミのことを誰にも譲らない。
神様にだって、誰にだって。
「…キミは僕の運命なんだから」
*
ある日の調教終わり、シルバーバレットに袖を食まれた。
いつもはそんなことしないのに、と珍しさに止まってみるとじぃ、と真剣な目で見つめられた。
「どうしたの」
「…」
そう問いかけるとシルバーバレットの体勢が低くなって、
「っ待って、バレット!」
轟、と一陣の風が吹いた。
静止する暇もなく視界から消えた彼は振り向いた先、数十メートルのところで僕を見つめていた。
「バレット」
「…」
「やるつもりかい」
「ブルっ」
その走りは彼があのジャパンカップの時に見せた最速の走り。
ただ速さというものを究極まで突き詰めたその走りは並大抵の者が下ろせるものではない。
「…はぁ、分かったよ」
ため息を吐くと機嫌が良さそうに嘶かれる。
もうすぐ爺さんの男に無理をさせる…とため息を吐けば、『だってその方が面白いだろ?』とでもいう風に目を緩ませるシルバーバレット。
「キミには本当に適わないなぁ」
"最速"
「突き付けてやろうぜ、相棒」
「ブルっ!」
僕:凱旋門賞に行くウッマ。
面白そうだからという理由で『領域』使おうぜ!になってる。
ジャパンカップ時は騎手くんが身構えてなかったから重心とかがアレで『領域』の出力が落ちてるというか、海外遠征してる間に『領域』のレベルが上がってるというか…。
騎手くん:僕に激重感情。僕を『運命』といってはばからない。
神様にも誰にも僕のことを譲るつもりはないくらいには惚れ込んでいる。
──────次回、ロンシャンの地に"怪物"来る。