仲良し。
『皇帝』と謳われるシンボリルドルフに気軽に話しかける者はそういない。
同年代などを除けばほとんどが彼女を偉大な生徒会長と見たりなど、自分とは天と地ほどの差がある存在だと看做す…ワケだが。
「そんなに遠巻きにされるほど、キミって怖くないのにね」
「…そう言うのは、貴女だけですよ先輩」
きょとりと首を傾げる目の前のウマ娘-シルバーバレットにシンボリルドルフは堪らず苦笑する。
…いや、昔からこのウマはこんな性格だと分かってはいても何処の誰でも分け隔てなく接する彼女に調子を狂わされているのも、また事実。
思えばふたりの付き合いは意外と長かった。
若くして生徒会長となったシンボリルドルフに、生徒会に生徒会長
『流星の綺麗な先輩からお願いされてね』と当時彼女は言っていたか。
しかし当時はそれを建前だと思い、彼女を手負いの猛獣が威嚇するかの如く遠ざけては「己はそんななまっちょろい優しさで陥落するタマではないぞ」とばかりに威圧していたものだ。
今にしてみれば随分と可愛らしい()態度だったと思うし、当時の自分を殴りたい衝動にも駆られる…が。
「ふむ、この様子では……」
「?……何か?」
「いえ、何でもありませんよ」
努めて。
努めて、清廉潔白で厳格かつ慈悲深い優等生として振る舞う。
久方ぶりにふたりきりに慣れた嬉しさを隠し、まだふたりきりでいさせてくれと願うように。
「それにしても美味しいね、この紅茶もお茶菓子も」
「そうでしょう?」
「でも食べ過ぎはよくないか。こんなに食べたら夕ご飯が入らなくなっちゃう」
「ははは」
「まぁ、その前に太り気味になるかもだけど」
「…………」
「冗談だよ、そんな可愛い顔しないでくれ」
「してませんけど!?」
「あーほらほら落ち着いて。そもそも僕は生まれてこの方太り気味になったことがないんだ」
「誰のせいですか!」
はっ!しまった。
つい素が出てしまった。
慌てて取り繕おうとしても時既に遅し。
にんまりとした彼女の笑顔を見てしまえばもう何も言えないでは……。
「まったく、相変わらずだねぇキミは」
「それはこっちの台詞です……」
「ふふ、いいじゃないか別に減るものじゃないんだし」
「そういう問題じゃなくてですね……ああもう、本当に変わりませんよね先輩」
「お褒めいただき光栄至極…かな?」
ため息のままに、口をつけた紅茶はもう冷めきって。
それでもどこか温かく感じてしまうのはきっと…気のせいだろう。
僕:
シルバーバレット(ウマ娘のすがた)。
今の生徒会が今の形になるまで【皇帝】の補助をしていた。
本バいわく「世話になった流星の綺麗な先輩にお願いされたから」とのこと。
基本は良い先輩の顔をしているが時おり年相応に【皇帝】をからかったりしては仲良くなろうとしていた模様。
んで、その結果が今である。
【皇帝】:
シンボリルドルフ。
むかしは手負いの獣のようだった。
それは名家の生まれが故の見知らぬ相手への警戒だったのか、はたまた彼女が生来持ち得たものだったのか。
だが自分に気圧されず親しく関わってくる僕に次第に絆され…?
ちな今、僕のことをどう思っているかは…ふふふ。