さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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予言の電話、それは今はもう居ない兄弟の声によく似ていた。



誰としれない

私の家には一台の固定電話がある。

よくあるタイプの固定電話だ。

とはいっても携帯電話が普及した今とあっては使うこともなかなかないのだが。

 

「ねぇ、母さん」

 

そんなある日。

子どものひとりがこう告げた。

 

「今から雨が降るんだって」

 

そうは言われても、空は気持ちのいいほどの晴天で雨の気配なんて一縷もなく。

「はやく入れた方がいいよ」という子どもの声に疑いつつ洗濯物を取り入れれば、そこから数分も経たないうちに俗にいうゲリラ豪雨が通り過ぎ。

その日より、子どもたちが各々に私のところへやって来てはやれ「今日は××が怪我をして帰ってくる」やら「△△が風邪をひくらしい」など予言めいたものを口にするようになったのだ。

 

最初は半信半疑だった私だが、それが二回三回と続くとなると信じざるを得ないわけで。

そんなこんなで私はこの不思議な現象について子どもたちに聞いてみることにしたのである。

すると、

 

「おじちゃんがそう言ってた」

 

子どもの皆がそう答え。

おじちゃん、というのにも心当たりがあるにはあるが現在海外在住であるあの子がわざわざかけてくるはずもない。

となると……?

私が首を傾げているうちにまたひとりの子がその口を開く。

 

「お兄ちゃんはね、いつも『フォーは元気?』って聞くの」

 

その呼び名にハッとする。

その呼び方をするのは、たったひとり…。

 

 

その電話をはじめて取ったのはきょうだいの一番上の子であるシルバーチャンプだった。

 

「はい、シルバーチャンプですけど」

『あぁ、おじさんだよ』

「は?」

 

電話口から響いた声は「おじさん」と名乗りつつも若々しい声だった。

一瞬聞き間違いかと思ったものの、受話器の向こうからは確かに先程と同じ人物と思われる声で言葉が続けられる。

 

『えっと、キミの名前を教えてくれるかい?』

「俺の名前はシルバーチャンプだけど……」

 

戸惑いながらも答えると、相手は満足気にうんうんと相槌を打った。

本来ならば警戒するべきだったのだろうが何故かこの時のシルバーチャンプは不思議とその相手に安心感を覚えていた。

そしてそれは向こうも同じようで、彼はまるで旧知の仲の親族のように親しげな口調で語りかけてくる。

 

『そっか、じゃああとはそうだな……フォーは元気かい?』

「んー…?『フォー』って?」

『あぁ、キミのお母さんのことだよ。ほら、シルバフォーチュンって名前だろ?』

 

……何の話をしているのか全くわからない。

そもそも自分の母親の名前がシルバフォーチュンだと知る人間はいても、その愛称で呼ぶものはいなかった。

それを何故そんなにも親しげに語ることが出来るのか。

シルバーチャンプの中で得体の知れない恐怖が膨らんできつつあったその時。

 

『じゃ、そろそろ雨が降るみたいだから電話切るね』

 

───プツッ。ツーツーツー。





電話さん:
何だか未来を予言してくれる非通知さん。
子どもと話すのが楽しいようで、話が弾むこともままあるが大人がその話し声に気づくと「またね」の言葉と共に電話が切られる。
誰かは不明。だが「おじさん」ではあるらしい。
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