さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ある一幕。



怖い話でも、してみましょうか

「怪談話って、よくあるじゃない」

 

ぽつり、と芦毛のウマが話し出す。

それまでは学校の怪談だとか、あの場所には幽霊が出るらしいとか、そういう眉唾の話ばかりだったのに。

 

「思えば家が、僕にとってはそうだったなって」

 

*

 

いや、今の家はそんなんじゃないんだけど。

僕ね、妹が産まれるまでは祖父の家…というよりは母方の、ホントの本家ってところで過ごしてたんだ。

あそこ、もう古くなって久しい日本家屋でさ。

ボットン便所では流石になかったけど蔵もあったし…座敷牢もたしかあったな。物語の中みたいだろ?

…ま、それはそれとして。

 

その本家ってやつは、本家っていうぐらいだから随分とまぁ歴史があったらしい。

家系図だって見たことあるよ?長すぎて途中で閉じたけど。

…そんな家だからさ、一族を見るとたくさんのヒトがいたってワケ。

 

で。

ヒトがたくさんいるとね…連れ帰って、くるんだよ。

そりゃあもう年代ものなのがたくさんいたよ?

夜寝てるときに顔覗き込まれてなに言ってんのか分かんないことブツブツ呟かれたり。

本家に入る曲がり角のところにざんばら髪の眼窩がない女の人が立ってたり。

家で祀ってる祠が壊されたと思ったら近所の学校のヤンチャなおにーさんたちが必死に謝ってきたりとか。

うん、最後のはちょっと違うかな。

 

ともかく。

家からして視(・)や(・)す(・)か(・)っ(・)た(・)んだろうねぇ、在(・)り(・)や(・)す(・)い(・)ところだったんだろうねぇ。

とはいっても家に住んでた僕らは慣れきっちゃって反応ひとつしなかったんだけど。

そこは、申し訳なかったかなぁ。

 

…あれ?怖い話まだ話してないな。

今から体験した中でいちばん怖い話するね。

え?いい?…そんなぁ。

 

*

 

『…おじいちゃん』

『ん〜?』

『"アレ"、なに?』

『いきりょー(生き霊)』

『ふぅん…』

 

僕には真っ黒な澱にしか見えなかったソレは、祖父の目にはヒトの形として映っていたらしい。

幼いころに暮らしていた本家は、どうにもそういったものが成立しやすい環境だったようで。

僕は祖父によく言われていた。

 

"チビはやさしいから。だから気をつけなさい"

 

当時はよく分からなかったが、要は同情したりするなということだったのだろう。

「ココに吹き溜まっているヤツらは同情する価値もないから」とは祖父の語であったが。

とにかく。

この土地(本家)に在る(いる)ヤツらと関わるなと、祖父は口酸っぱく言っていたのだ。

 

「とは、言ってもねぇ…?」

 

何年経っても僕に視(・)え(・)る(・)のは、

 

「真っ黒な澱だけなんだよねぇ」

 

でも。

 

「昔よりは綺麗になってる…気がする?気のせい?」





一族本家にあるモノ:
生霊とかその他諸々が寄り集まっている蠱毒的日本家屋。
だがその蠱毒(なか)に一族の者はひとり足りともいない。
一族の者共が全員似た"ある性質"を持っていたがゆえにできたモノ。
でも一族の者全員がそれらをスルーにスルーできる者たちであったため何もできない、本懐を遂げられないまま何年も居続けるしかない。
そんな場所。

一族のひとびと:
危なっかしい子々孫々に憑いては守ってやっている。
が、それはそれとして家の掃除もする。
だって、澱ばかりの家は…汚いでしょう?(ニッコリ)
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