さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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なんかこの時期の銀弾宅みっちりしてそう(色んな意味で)。



迎え入れ

盆の季節になると昔からいろいろなものを用意した。

昨今ここまでやる家はないだろうというぐらいに盛大にやるのだ、ウチの家は。

精霊バを作り、お供え物を用意し、で迎え火を焚いて。

そして玄関先には本家の蔵から持ってきた提灯を下げる。

そうしてようやく迎える盆の始まりだ。

 

「あー……やっぱ暑いなぁ……」

 

僕は縁側に腰掛けながら空を見上げる。

雲一つない快晴だった。

今年は例年に比べて蒸し暑い。

例年通り着流しを着ながらパタパタと団扇で扇ぐもいっこうに暑さがマシにならない。

汗ばんだ肌にはりつく布が気持ち悪いことこの上なかった。

 

「……」

 

ふと思い出す。

むかしのことを。

あの時の僕はまだ、ただの学生だった。

今はもう違うけど……。

それでもやっぱり思い出してしまう。

 

「みんな元気かな……」

 

盆であるのだから。

きっと"あのウマたち"も還って来ているのだろう。

あちらから、こちらへ。

「…」

さり、と未だ残っている顔の火傷跡をなぞる。

痛みはないけれどやはりふとした時に気になるものだ。

それに……。

 

(……これだけが、証だから)

 

"あのウマたち"は、言っては悪いがそこまで有名なウマではなかった。

僕がいたから、その名を時おり語られるだけであって。

それ以外は…とんと。

ただその走りだけは確かで、誰も彼もが僕の心を掴んでいった。

掴んでいって、離さなかった。

……だからこそ、か。

 

「『お前は楽しんで走れ』か…」

 

それは彼らからのいつかの言葉。

僕への叱咤激励。

ゆえに僕はその言葉を胸に走り、走り終えたのだが。

 

「…」

 

ぼた、と涙が床に落ちる。

ぽたぽた、ぼたぼた、と。

とめどなく、どうしようもなく溢れてくる。

ああ、そうだよなぁ。

だって、"あのウマたち"はもういないんだよなぁ。

ずっと一緒にいると思っていた。

いつまでも一緒だと、思っていた。

でも違った。

違ってしまった。

わかっているつもりだった。

理解しているつもりでいた。

けれど。

 

「さび、しい…」

 

 

『あいっ変わらず泣き虫でやんの』

『なァ、この三角頭巾取っていいと思う?』

『いいんじゃね?邪魔だろ』

『それな〜』

 

そのまた一方。

泣きじゃくる小柄なウマのそばでやんややんやと騒ぐ声。

その声の主はかつて、そのウマと共に駆け抜けた者たちであり、そのウマにとってかけがえのない存在だった者たちでもある。

しかし、そんなことは露知らず。

泣いているそのウマはただひたすらに泣くばかりであった。

 

『…あんだけスゲェ記録作っても、変わんねぇな』

『安心するよね、逆に』

 

…それは、蒸し暑い夏の夕暮れだった。





入れ代わり立ち代わり、いろんな方々が遊びにくるお家。
ちな全員が全員、この家の者々を心配しては加護っぽい『ナニカ』を授けていくとか…?
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