それから幾月か経って、大きなレースに出ることとなった。
今まで出たレースよりも人の集まりが多い場所に僕は「早く帰りたいなぁ」と思った。
けれど彼が僕の上に乗って走るのは好きだからまぁいいかと思った。
ゲートが開いて、直ぐに飛び出した。
後ろから追ってくる気配はあまりない。
悠々と彼の指示通りに走ってゴールした。
やはり走る距離が決まっているというのは気に食わない。
僕はずっと彼とともに走りたいばかりである。
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幾月か経ち、無敗であるシルバーバレットは阪神3歳ステークスに出走することとなった。
いつも通り気負うこともない彼はさっさとゲートから飛び出し快勝。
後続を1秒ほど引きちぎっての勝利だったがまだ全力は出していないだろう。
ゴール後に褒めてやれば「もっと走りたかった」という風な目で見つめられた。
あれほどの速さで走ってもバテていないようだ。
そしてこれ程強い馬であるのなら、もしかすると三冠だって夢じゃないという声が聞こえ出したのも、この頃だった。
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…死ぬかと思った。
じくじくと痛む左顔面に少々不機嫌になる。
こうなったのは数ヶ月前のこと。
冬で乾燥した空気の中、僕が今現在過ごしている場所が火事になったのだ。
知り合いだった馬も何頭か亡くなったらしいと後に聞いた。
かくいう僕も少しばかり生死の境をさまよった訳だが。
まぁ生き残ってみれば左顔面に火傷を負うわ、それに伴い左目は光を感じることができるだけ御の字という風になるわで大変である。
火事が起きた時、僕は眠っていたところだったのでそのことがトラウマになり、寝るに寝れなくなってしまった。
また左目がほぼ機能しなくなったために前まで以上に気配に敏感になり、気を張ってしまう。
僕を世話してくれている人たちも何とかしてくれようとしているみたいだけれど、これは時間をかけて解決するしかないように思えるんだよなぁ…。
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シルバーバレットのいる厩舎が火事になったと聞いたのは冬の日の深夜だった。
慌てて駆けつければ轟轟と燃える厩舎から何とか助け出されたらしい火傷を負ったシルバーバレット。
走りたがる癖があって、手前の馬房に入れられていたのが幸いしたのだろう。
他の亡くなった馬のように気管の火傷はなく、命は助かった。
だが、今まで以上に彼は気難しくなったように思える。
夜に火事があったせいか寝るに眠れず、左目が火傷でほぼ機能しなくなったために左側から近づく影があるとその相手を蹴ろうとするなどの恐慌状態に陥りそうになったり…。
そんなことになってしまったため、輪をかけて彼は他の馬から遠ざけられるようになった。
僕:今回火事にあった。
左顔面に火傷を負い、左目もほぼ見えなくなってしまっている。
夜に火事が起こったトラウマで睡眠があまり取れない体になってしまった。
また左目がほぼ見えないために、左側から自分に近づく影が見えると恐怖から蹴ろうとしたり、暴れる悪癖がついた。
天候によって火傷跡が痛むので多少不機嫌になったりする。