おいていかないで。
父に抱っこしてもらえるのは、周りに自分以外の"きょうだい"がいない時だけだった。
父は、僕たち"きょうだい"にそれはそれは愛されて、そしてその愛を返してくれたから。
そんな父が大好きだった僕は、よく"きょうだい"と喧嘩をした。
『なんでおとうさんをひとりじめするの!』
『いいじゃない!わたしだってハイセイコみたいにとうさんにだきつきたいもんっ』
『やだ!ぼくの…、ぼくのおとうさまなのに……!!』
そうやって言い合いをしているうちに、いつも泣き出してしまうのは僕の方だったけれど。
それでも幸せだったんだと思う。
だって。
父にはもう、会えないのだから。
*
父が死んだ。
少し暑くなってきた初夏の、夕暮れ時にひっそりと。
丁寧に誂られた庭園の見える縁側で眠るように。
『兄さんがね、言ってたわよ。あなたたちのこと、「自慢の家族」なんだって』
叔母の言葉を聞いても涙が出なかったのは何故だろう?
いや、本当はわかっていたのだ。
父が亡くなったあの日以来、僕らは泣けも笑えもできなくなってしまった。
父の死を、僕らは…。
「…………」
僕ら家族にとって、父の影響力は絶大だった。
長生きだった父。
いちおうは長子である僕も当主としての指南を受けてはいたが父の補佐としての意味合いが強くて、実際に仕事をするのは父のほうが多かった。
任された仕事も簡単な書類整理とかだけだったけれど、でもそれが僕にとっては嬉しかったし誇らしかった。
父のように立派なウマになりたかった。
しかし。
「……、……」
半ば。
父のようになりたいと、願いながらも。
父が死ぬはずはないと。
僕らは、父の血をひいた僕らは、思っていたのだろう。
だけど幸せな現実は父の死によって終わりを告げ。
ずっと僕らを導いてくれていた背は消えてしまった。
……ああ、そうだ。
きっとこれは罰なのだ。
父の望みを叶えられず、何もできないままであった弱い僕らへの報いだ。
とうさん。
あなたは、ずっと自分と対等にいてくれる誰かを求めていたというのに。
あなたの孤独を癒すことができなくて、本当にごめんなさい。
とうさんのそばにいたかったなあ。
ねえ、どうして死んでしまったんですか?
もっと一緒に生きていたかったです。
こんなにも悲しい気持ちになるなら、いっそ…。
「……ごめんなさい、おとうさま」
そう呟いて、僕は静かに目を閉じた。
・
・
・
何度も
…まあ、いっか。
それにしてもこの身体、結構良い感じだ。
今までで一番と言ってもいいくらい。
何より若いっていうのが良いよねぇ。
はやく走り出したいよ。
ということで〜。
「しゅっぱ〜つ!!」
ちょっと、あっちに行ってくるわ!
だいじょぶだいじょぶ、すぐ戻るから!(戻るとは言っていない)